外資で稼ぎまくる妻
いつか見返してやるという野心
Bさん(44歳男性)は食品メーカーの営業だが、妻は外資系金融会社で働くキャリアウーマンである。
年収の差はかなりのもので、その開きが一番大きい年、妻はBさんの4倍を稼いだ。圧倒的な差であるがBさんは「妻を越えてやろう」とする野心を抱き続けてきた。たとえ、もしBさんが勤めている会社で役員になろうとも妻の年収には及ばないとわかっていても、である。
Bさんは不器用な性格であり、何事かをこなすに当たって人より時間がかかった。
「人よりできない自分は、人より努力しなくてはいけない」と思い定め、寓話(ぐうわ)『ウサギとカメ』のカメよろしく、こつこつと成長を志してめげない強靭(きょうじん)さがあった。あるいは、「どうあがいても勝ち目のない妻との年収勝負にいつか勝利する」という荒唐無稽な野心に本気で燃えていられるのだから、楽天的ともいえるのかもしれない。
しかしその楽天性がBさんの牛歩を支えていることは確かであり、Bさんの強みともなっているのであった。
「妻にいつか勝つという気持ちがあるから仕事に前向きになれる。自分はこの気持ちがあったから成長してこれたし、これからも仕事にはこの緊張感をもって臨みたい」(Bさん)
“悔しい”や“情けない”といった、ネガティブな感情を抱いたことはあるのだろうか?
「もちろんある。が、“悔しい”も“情けない”もネガティブな感情であるとは思っていない。そういった感情が燃料になるからファイトが継続できる」
妻に勝利することにやけにこだわるBさんであるが、そこには夫婦関係にも原因がありそうである。
「妻は年上で、付き合っている時から姉さん女房気質だった。自分はガツガツした気性だけど要領が悪いので後手に回ることが多く、尻に敷かれていた。いつか妻を見返したいという気持ちはあの頃から培われていたのだと思う」
闘争心とは偉大なもので、ネガティブでダウナーな材料をポジティブなものへと捉えさせ得る。不屈の精神を備えるBさんにとって、妻の高収入は燃料の1つに過ぎないようである。