パク・ヒョヌさん(26)は何かまずいことが起きていると直感した。時刻は真夜中近く、彼の乗るバスはさびれたガソリンスタンドで1時間以上、停車していた。パクさんは中国を通り抜けようとしていた。  警察が近づいてくるのが見えた。パクさんの手引き役が電話で言った。「走れ、隠れろ」  パクさんは父親とともに北朝鮮を脱出した。それは何千キロにも及ぶ危険な旅だった。大勢の脱北者がたどるのは、中国大陸をひそかに縦断し、北朝鮮からの亡命者を受け入れる第三国にたどり着くルートだ。その後は通常、韓国のソウルに移送される。