• 自社株買いが果たしてきた役割
10年近い強気相場を支えてきた最も重要で持続的な要因の一つに、企業トップが株主の資金を使って気前よく行ってきた自社株買いがある。これとは対照的に個人投資家は、この長期の強気相場に過去の強気相場ほどは参加してこなかった。彼らは2回のひどい弱気相場で味わった痛みをまだ覚えているからだ。
調査会社マクロメイブンズの創業者、ステファニー・ポムボイ氏は、強気相場を支える上で「自社株買いが果たす役割の大きさ」が十分に理解されていないと断言する。「自社株買いが行われなくなってようやくその価値に気付くだろう」と同氏は付け加えた。
米国株が昨年の9月20日以来で14%も急落していることで大胆になった最高経営責任者(CEO)は依然として潤沢な手元資金で自社株買いを続けると思われがちだ。ところがそこには幾つかの盲点がある。第1に経営陣のタイミングの悪さは有名で、相場が好調で自社株が割高な時に購入することが多いため、リターンは小さくなる。そして相場が下落して自社株が割安になると、企業トップはおじけづき、自社株買いを控えてしまう。市場が低迷すると、状況が悪化した場合に備えて手元に資金を保持しておきたくなるのだ。
米企業の社債発行額は2018年に21%も減少しており、投資家は今になってようやく、自社株買いブームをあおってきた社債バブルがしぼんでいることに気付いてきたとポムボイ氏は指摘する。
2011年以降の金融危機後の回復期に6倍に増えた自社株買いはバブルの定義に当てはまっていると同氏は主張する。2018年だけで7000億ドル以上の自社株買いが行われた。その規模は既に2007年当時のサブプライム住宅ローン市場を上回っている。にもかかわらず、強気筋は今年、自社株買いがさらに増えると見込んでいる。
米株式市場が金融危機以前の水準に戻った2011年初め以来の自社株買いの総額は約4兆ドルに達している。これはS&P500指数の時価総額増加分12兆5000億ドルの約3分の1に相当する。株式発行額が自社株買いの金額を上回る金融セクターを除くS&P500指数の時価総額増加分は8兆6000億ドルだが、自社株買いが少なからず貢献している。「株価回復の半分は自社株買いによるものだということに誰も気付いていないと思う」とポムボイ氏は言う。
自社株買いは一つの収入源であって、担保にして借り入れしたりレバレッジを利かせたりできる資産ではないと同氏は指摘する。にもかかわらず、期待される収入にレバレッジを利かせているところに問題が待ち受けている。
株式投資家は自社株買いを配当のように恒久的なものとみなすようになっている。そのため、自社株買いのための資金が枯渇すると、そうした期待に疑念が生じるという危険がある。
また、自社株買いは発行済株式数を減らすことで1株当たり利益(EPS)を膨張させたり、利益成長をより大きく見せたり、強気相場の追い風になったりしてきた。2011年以来、S&P500指数の「自社株買いで膨張した」EPSは67%も増大したが、米商務省経済分析局が記録した同期間の米国企業の利益総額の増加率は23%にとどまっている。
投資家は自社株買いバブルが崩壊したときの影響を本気で心配していないようだ。ポムボイ氏は「本気で心配する理由などない。住宅価格が上昇し続けるように、自社株買いも増え続ける一方なのだから」という投資家心理があるとみている。他のバブルがそうであるように、このバブルも弾けて初めて実態が分かることになるだろうと同氏は付け加えた。



