大阪メトロは昨年末、夢洲駅に高さ275メートルのビルを建設する計画を発表した。関西ではアベノハルカスに次ぐ高さで、総工費は約1000億円。しかし、この計画には危うさもつきまとう。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
大阪メトロがぶち上げた
超高層ビル建設計画
大阪メトロが昨年末に発表した駅リニューアル計画は、デザインコンセプトとイメージ図が大きな注目を集め、同時に批判の的となった(「悪趣味な地下鉄駅改修案に府民仰天、大阪メトロ迷走に批判殺到」を参照)。しかし同時に発表された「夢洲駅周辺の開発への参画」構想は、それほど大きな話題になっていないように見受けられる。
2025年国際博覧会(大阪万博)の会場であり、カジノを含む統合型リゾート(IR)施設の誘致を目指している大阪港の人工島「夢洲(ゆめしま)」。2024年度までに大阪メトロ中央線をコスモスクエア駅から夢洲まで延伸して、鉄道アクセスを確保する計画だ(「大阪万博は鉄道輸送がネックに!?平均混雑率185%の深刻度」参照)。
大阪メトロは昨年7月に発表した中期経営計画の中で、大きな成長が望めない鉄道事業に代わるグループの牽引役に、広告事業と都市開発事業を位置付けた。都市開発事業では、計画期間中に着手を目指す候補地として、東の拠点「森ノ宮エリア」と西の拠点「夢洲・新臨海観光エリア」を掲げており、夢洲にIR誘致が実現した場合は、数百億円を投資して観光客向け商業施設を開発する意向を示していた。
今回の発表は計画をさらに発展させて、夢洲駅と一体化した高さ約275メートルの超高層タワービルを建設し、低層階を商業施設、中・高層階をオフィスにするというものだ。「多様性が活力を生み出し、それが大阪中に染みわたっていく」というコンセプトを体現した複雑な形状をしており、総工費は1000億円を見込んでいる。
現在のところ、高さ250メートル以上の超高層ビルは日本に5棟しか存在せず、夢洲タワービルが完成すれば、高さ約300メートルの「あべのハルカス」に次いで関西で2番目に高いビルになる。奇抜なデザインがやり玉に挙げられた駅リニューアル計画とは異なり、夢洲タワービル構想は民営化の象徴的な取り組みとして期待感を抱く人が少なくないようだ。しかし筆者は、夢洲タワービル計画が駅リニューアル計画よりもよっぽど経営を揺るがしかねない、大きな問題になるのではないかと危惧している。