いくら介護をしても、悪口や嫌味、悪態ばかり。黙って介護されていればなんとか頑張れるものの、精神的にも限界だと。

 私は彼女に「あなたの、介護をしたくないという気持ちが、お舅さんに伝わっているのではないでしょうか?」と質問しました。彼女は無言になってしまいました。

 もちろん、介護でも「返報性の法則」は存在します。

 イヤイヤ介護していることは、介護される側にすべて筒抜けです。結果として、介護への抵抗、悪口や悪態、興奮や暴力など、「悪意の返報性」として返ってくるのです。

 介護する人が心から明るい気持ちで介護していると、介護される側も明るい気持ちになって、気持ちよく介護を受けてくれるのです。

 そこで、彼女に次のようにアドバイスしました。

「今までの恨みつらみはすべて忘れてください。いろいろ思うところは、あるでしょうが、1週間だけでいいので、『お舅さんとはじめて会った』と思い込み心のなかを空っぽにしてください。そして、心を込めて、献身的に、笑顔で介護してください」

 彼女は最初「そんなことはできません!」と否定的な態度を示していました。

 ですが、「1週間で、必ず相手の態度は変わります」と私が断言したのを聞いて、「それなら、なんとかやってみます」と言いました。

 1ヵ月後に彼女が来院しました。陰鬱な表情はどこにもなく、笑顔で言いました。

「おじいちゃんが変わりました!」

 数年の介護の結果、悪口や悪態が日常的になり泥沼となった嫁舅関係。それが、「好意」を持って1週間接しただけで、お舅さんの態度は柔らかになり、悪口や悪態もなくなったのです。最後には「ありがとう」と感謝の言葉まで口にしたのだそうです。