しかし翌日の3日、中村被告のドライブレコーダーを解析した府警が殺人容疑に切り替えて再逮捕。4日、大阪地検堺支部に送検した。

 ここは表になっていない部分だが、重大事案は逮捕・送検前に警察と検察が事前協議するのが普通で、特に前例がなく社会的影響が大きい事案は、上級庁に報告し指示も仰ぐ。この事件は殺人容疑での再逮捕が、発生直後の過失致死での現行犯逮捕の翌日だった。警察庁と最高検にも早い段階で報告が上がり、その上でゴーサインが出された可能性が高い。

 検察側には慎重論もあったようだが、あおり運転が大きな社会問題になる中、厳罰化を望む社会の要請に応えるべく、「いける」という確かな手応えがあったとみられる。

 23日には予定通り、殺人罪で起訴。今年1月10日に公判前整理手続きが終了し、15日に初公判が指定された。

被害者母親の慟哭

 15日の初公判。中村被告は罪状認否で「事故を起こし被害者を死に至らしめたことは事実」とする一方、「故意に被害者のバイクに衝突させていない」と殺意は否認した。

 検察側は冒頭陳述でドラレコに被告の「はい、終わりー」という音声が残されていたこと、衝突時の映像から被告が高田さんを死亡させる危険性を認識しながら、故意に車を衝突させたと指摘した。

 弁護側は検察側主張に対し、立腹して追跡し、故意に衝突させた証拠はないと反論。被告が車線変更するとバイクも同様に変更し、ブレーキを掛けてきたため危険と思いパッシングしたと説明。バイクは一度視界から消え、再び現れてブレーキを掛けたが間に合わなかったとし、殺人罪は成立せず、自動車運転処罰法違反罪に該当すると主張した。

 平たく言えば、検察側はあおり運転の末の殺人事件、弁護側は高田さんの危険運転が原因の過失事故を主張する構図となった。

 同日午後も続いた公判の証拠調べでは、ドラレコの映像を再生。バイクが車を追い抜いて前方に現れた後、車が急加速させてパッシングしながら追跡、衝突後に「はい、終わりー」という音声が記録されていた。