なぜ不祥事がこんなに多いのか、という素朴な質問を受けることがある。こういう質問に答えるのはとても難しい。そこで今回は、不祥事のタイプ、背景や原因、などを類型化して、なぜ不祥事が多く起こる(ように思う)のかについて考えてみたい。
不祥事は6つに類型化できる
まず、不祥事にはどんな種類があるか、見ていこう。日本監査役協会の「企業不祥事防止と監査役の役割」では、不祥事を5つに類型化できると想定したとしている。私はこれに(6)を加えたい。
(1)経営トップが絡むケース
トップがワンマンの場合に起こりやすい。最近自動車メーカー経営者についてのニュースが世間を騒がせたものの、日本では、自分の私腹を肥やすよりも、会社の存続を図るために経営者が、粉飾決算その他の問題行為を主導するといったケースが多いといわれている。ただし、最近では、日本でも、経営陣が自社株のインサイダー取引に絡むケースなども出てきている。
(2)特定分野、特殊分野で起きるケース(聖域を含む)
技術系など、専門性が高いことから社内外の他者からのチェックが利かず、担当が聖域と化したあげく、最終的に問題行動が表面化するケースである。データ不正、品質不正、リコール隠しなどがこれにあたる。
(3)企業文化、風土に根差すケース
問題行為だとわかっているのに、必要悪としてそれを安易に許容してしまう企業文化に根差している。裏マニュアルを使っての手抜き工事、違法な長時間残業、談合的体質などもこれに該当する。
(4)個人犯罪
お金の横領などの個人犯罪は、会社は加害者ではなく被害者である。しかし、元をただせば会社の内部統制の欠如が原因である。業務の役割分担が不完全で不正行為が可能な状況にあり、さらには適切なチェックが働かないと、個人犯罪を誘発することになる。具体的には横領、機密情報の流出などがこれにあたる。