
都道府県知事は、自分の手柄となる新しい政策を始めるのに必死で、不要となった既存事業を廃止して職員の負担を軽減することには無関心――。ダイヤモンド編集部が独自に実施した都道府県職員へのアンケートでそんな実態が明らかになった。特集『公務員の危機』の#30では、仕事の取捨選択が進まず、無駄な仕事が増える一方となっている都道府県の実態を、職員らの声から明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
勉強しない地方議員、働かない管理職への不満も
都道府県職員からAI活用を求める声
お役所は、仕事を増やすのは得意だが、仕事を減らしたり、効率化したりすることは不得手のようだ。
既存の政策でメリットを得る既得権者への忖度などもあって、役所には無駄な仕事ばかりが増えていく。
その傾向は、中央省庁に限らず、都道府県庁にも共通しているようだ(国家公務員の無駄な仕事については本特集の#29『お役所の「不要な仕事・規制・既得権」を官僚ら212人が激白…国会対応はAIでOK!審議会、自衛隊の式典は要らん!』参照)。
ダイヤモンド編集部は独自に実施した公務員・日銀アンケート(下図参照)で、都道府県職員らに、不要だと思う「仕事」「規制」、見直すべき「既得権」を聞いた。
すると、都道府県庁の仕事の非効率性を指摘する、以下のような回答があった。
「要らない予算がたくさんある。だが、前例主義で予算を削らない。管理職は自分の代でなくすことを恐れている」(50代の兵庫県職員)
「一度始めた事業は、既得権益が少しでも損なわれる可能性があればやめられない。効率が悪い」(30代の長野県元職員)
「毎年、新たな仕事が増えていくが、それに応じて、減る仕事の量が明らかに少ない」(30代の福岡県職員)
優秀な人材が流出していることに危機感を持ち、働き方改革などに取り組む都道府県が増えている。だが、不要な仕事を減らさなければ、職員がやりがいのある仕事に集中することはできず、問題の本質的な解決にはならないだろう。
上記アンケートで都道府県職員らは、削減すべき仕事として、有識者による審議会や、国への要請活動、県議会への対応、外郭団体の事務などを挙げた。AI(人工知能)を活用して効率化を図る必要性を訴える意見もあった。次ページでは、普段あまり聞くことができない県庁職員らの本音を明らかにする。