回転寿司業界2位のあきんどスシローが、店舗の総合力強化を目指し、1月25日、大阪府吹田市に従来店の進化系となる「吟味スシロー」を出店した。実験店と称するが、今後の主力形態としたい考えだ。
マグロなどの約20種類のネタを10~20%増量したり、天ぷらなど一品料理を提供するためのフライヤーを導入したりと商品を強化する他、高級感のある外観・内装とし、接客サービスも強化するが、価格は従来並みを維持する。
「実質値下げ。それだけ危機感が強い」。変革に駆り立てる理由を、加藤智治専務取締役はこう話す。それもそのはず。同社の2008年9月期の既存店売上高は、前年比2.1%減。直近2008年12月も3.6%減となった。
外食業界全体の不調を考えると、回転寿司は相対的に見て比較的堅調だった。ファミリーレストランのすかいらーくやデニーズが2011年までの約3年間でそれぞれ140店、200店を閉鎖する方針を出す中、回転寿司は今期も首位のカッパ・クリエイトが40店、あきんどスシローが35店と手堅い出店を計画する。
しかし、この堅調さは他業態に比べて歴史が浅く、伸びしろがあるからにすぎない。全国展開を果たしていないため、出店余地も豊富、自社競合も含めて競争が少ないのだ。
今後ますます厳しくなると予想される外部環境を前に、生き残りをかけて取り組むのが今回の実験である。
課題は、原価の圧縮だ。あきんどスシローは、もともとほとんどのネタを105円均一で提供する。そのため原価率は51.0%と高い。競合のカッパ・クリエイトは37.8%だが、その差は郊外中心の出店や居抜きの出店で、設備投資や地代家賃を抑えることで巻き返す。しかしそれでも営業利益率は4.5%と、0.4ポイントあきんどスシローの方が低い(単独決算)。
商品とサービス強化で、原価率が一層上がりかねない吟味スシロー店では、単品管理による需要予測と自動発注で機会ロスや廃棄を圧縮、シフト管理システムの導入で人件費削減を果たし、「実質値下げのコスト増をカバーする」(加藤専務)と言う。
不況が深まる中、対応策を打ったあきんどスシロー。計画通りに集客力を上げ、なおかつコストアップを抑えられるか。“第2の創業”と位置づける実験店は、まさしく命運を握るものとなりそうだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 新井美江子)