今年1月7日、中国上海で壮大な着工式が行われた米テスラのEV工場「ギガファクトリー3」。中国で外資としては初となる独資の自動車工場の第1号案件となるが、その華々しい船出の裏で、熾烈なリチウムイオン電池(LIB)など主要部材の供給合戦が始まっている。

テスラ上海太古匯体験センターに展示される「モデルS」テスラ上海太古匯体験センターに展示される「モデルS」 Photo by Jin Tang

 上海浦東空港の南40キロメートルに位置する臨港工業区の中には、東京ディズニーランドの1.6倍に相当する広大な敷地(86万平方メートル)がある。

 2019年1月7日、電気自動車(EV)メーカー、米テスラのイーロン・マスクCEOが、ここで壮大な工場着工式を行った。「ギガファクトリー3」――。こう名付けられたEV工場の着工式である。

 中国における外資独資の自動車工場の第1号案件となったギガファクトリー3は、最大生産能力50万台を誇る巨大工場になる予定だ。今年末から一般市場を対象とした安価な「モデル3」と、低価格SUVの「モデルY」の生産を開始する。

 そもそも、テスラの中国展開は14年から始まる。

 きっかけは中国政府の新エネルギー車(NEV)シフトだ。中国政府は、自動車先進国に比べて内燃機関の技術開発が遅れる中、大気汚染の深刻化やガソリンの過度な輸入依存もあり、国策として12年からEVを中心とするNEV市場の育成に注力してきている。

 中国政府によるNEV化の後押しは絶大な効果を生み、中国のNEV販売台数(商用車を含む)は13年の1.7万台から、18年には125万台へと急速に伸びた。そのシェアは世界全体の実に5割超を占める。

 こうした中国の市場変化を敏感にかぎ取り、早々に行動を起こしたのがテスラだった。同社は高級セダン「モデルS」の輸入車販売を14年から開始。すでに中国全土に急速充電設備を1100台超、体験センターおよびサービスセンターを62店舗設置している。