好みのビールが店並みの本格生ビールで楽しめる好みのビールが店並みの本格生ビールで楽しめる Photo by Yoko Suzuki

週刊ダイヤモンド2月2日号の第一特集は「サブスク革命 定額課金の衝撃」です。自宅で本格的な生ビールを楽しめるキリンのサブスクリプションサービス「ホームタップ」。2017年にスタートし、開始早々申し込みが殺到したが、ビールサーバーの改良のため18年は新規会員募集を休止。19年1月から満を持して募集を再開した。他社との熾烈なシェア争いや価格競争にさらされ続けるビール業界でキリンが見出した、意外な突破口とは。商品開発研究所の落合直樹主査に話を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

――家庭用生ビールで会員制で継続課金するサブスクリプション(サブスク)を始めた経緯は。

 サブスクを目指した、というより“われわれが目指すものを実現するためには結果的にサブスクが一番合っていた”というのが実態です。

 もともと飲食店でしか飲めなかった新鮮な生ビールを、ご家庭で家族や友人と、しかも圧倒的な美味しさで体感できるサービスができないかと思ってたんですね。いわば“新しいビールの飲用体験”が提供できないかと。

「家庭で工場できたてのビールを飲みたい」というお客さんは昔からいらっしゃって、われわれもホームサーバー的なものを使って長い間チャレンジをしていました。ただ、従来は反響があると一気に注文が来て、対応に追われているうちにブームが終わり在庫の山を抱える、ということを繰り返していた。

 これを会員制にして定期的に商品を発送する形にすると予定数を売れますし、新鮮な状態でお届けできる。定期的にお金をいただいているので、われわれも良い意味で余裕があるんです。逆に言うと、こういうビジネスはサブスクにしなければコスト的にもしんどい。1万人で計画しているところに予想外に10万人来たら、もうアウトですから。

 これまでの商品の場合、商品を作ってバーンと特売をして、そこで売れなかったら、「ああどうしよう」となるのを繰り返す戦いです。お客様も「あの商品美味しかったのに、コンビニの棚からは2週間後に全部消えてた」とか、よくあるじゃないですか。メーカーがお客様の多様なニーズに対応できなくなっている。サブスク型にすると、そういう競争の呪縛からはある程度離れられる。