『週刊ダイヤモンド』1月12日号の第一特集は「変わります!ニッポンの『酒』」です。日本の酒市場は縮小の一途をたどっています。その背景には、人口減少や消費者の嗜好の多様化などの環境変化があります。さらに、ビール類の酒税統一、ワイン輸入関税撤廃、RTDという新たな主役の登場など、市場環境は激変しています。生き残るのはどこか。アサヒビール社長、平野伸一氏に今後の課題と戦略を伺いました。(本記事は特集からの抜粋です)
Photo by Yoshihisa Wada
――ビール市場全体のマイナストレンドが続いており、アサヒビールの主力商品「スーパードライ」に関しては2017年に年間1億箱の大台を割り込みました。現状をどう捉えていますか。
「スーパードライの復活は難しいか」とアナリストの方からよく聞かれますが、スーパードライは缶のイメージが強い。確かに2017年の販売数量約9800万箱の52%は缶ですが、樽と瓶で残りの半分を占めています。
私が申し上げたいのは、スーパードライをひとくくりにするのではなく、家庭用の缶と業務用の瓶と樽で考えなければならないということ。
酒税法改正や価格改定などで樽と瓶の価格が上がり、ビールからハイボールや酎ハイに需要が流出しました。そのため16年の後半から非常に厳しい状況にありましたが、実は17年半ばごろにマイナストレンドが少し弱まってきた。今、具体的に進めているのは業務用市場の活性化です。
その一つが、20年の東京オリンピックのエンブレムを記載したオリジナルの「555ミリリットルジョッキ」の展開。これは五輪シンボルの「五つの輪」と競技数の「55」を並べた、通常サイズ(360ミリリットル)より大容量のジョッキです。