「○○さん、お待たせしました。緊張していますか。大丈夫、すぐ終わりますからね」

 優しく話しかけると、瞳の部分だけをくり抜いた特注の手術カバーで患者の顔を覆った。点眼麻酔だけなので、患者は意識があり、会話もできる。

「ライトを見ていてくださいね」

 絶えず話しかけながら、これも特注の極薄ダイヤモンドメスで角膜をすっと切開し、白内障の原因である白く濁った水晶体を専用器具「プレチョッパー」で4分割。出血は1滴もない。次いで、超音波を発振する極小の掃除機のような器具で細かく砕き、乳化させながら吸い出す。掃除機のコマーシャルのように、瞳の白濁がみるみるうちに除去されていく。

「手術中は手指、目だけでなく、五感を働かせています」

 顕微鏡をのぞきこみ、1ミリ以下のズレもない正確さで手指を動かす。顕微鏡の操作や、超音波の出力、吸引圧のコントロールは足で行う。操作ペダルの微妙な反応を察知するために、サンダルは履かない。変調がないかどうか、患者の息づかいにも耳を澄まし、緊張が強いと察すれば、すかさず看護師に「手を握って差し上げて」と声をかける。

 クライマックスである「眼内レンズの挿入」は、マジックを見ているようだった。2ミリ以下の創口から直径6ミリのレンズを圧縮して、専用器具を用いて一気に挿入し、位置を微調整して終了。手術開始から3分ほどで、患者は濁りのない視界を取り戻した。

失明の危機にある人を
1人でも多く救うことが夢

トーリックマーカー
トーリックマーカー

 幼い頃から目が丈夫ではなく、眼科通いを繰り返していた赤星先生の夢は、自分を治療してくれた医師たちや、彼らが尊敬する医師・シュバイツァーのように「目の病気に苦しむ大勢の人々を治すお医者さん」になることだった。だから、自らの手術に用いるすべての器具をオリジナルで開発したが、そのほとんどについて、特許を申請していない。

 例えば原価4000円程度で開発した、乱視矯正用の眼内レンズ(トーリックレンズ)を正確に装着するために眼球の周囲に印をつける「エレクトリックトーリックマーカー」も、1台数千万円の機械と同等以上の働きをするが、やはり特許フリーだ。