アスペルガー症候群の特徴である聴覚過敏とフラッシュバックが組み合わさって、近隣のこども園まで園児の送迎に来た自動車のマフラー音や職員らの話し声などが騒音のように聞こえ、不満を募らせていったという。

 検察は「刑事責任能力は問える」と判断。傷害罪、建造物侵入、銃刀法違反、住居侵入のほか、路上に駐車していた車も同乗者にナイフを突きつけて奪おうとしたとして、強盗未遂の罪でも起訴した。これに対し、被告は「もともと無差別傷害と物を盗ろう(強盗)という意図はありません。被害結果がそうなったのは事実です」などと、強盗未遂については明確に否定していた。

 検察側は「完全責任能力はあった」として、求刑9年を求めていたが、弁護側は「自閉症スペクトラムの症状は『重度』で、事件当時、幻覚妄想が存在していた可能性がある」と主張。「このまま更生目的の刑務所に収容してもなじまない」などとして、執行猶予による医療措置を求めていた。

被告の体に痣を見つけたとき
「いじめなんてない」と学校は放置

こども園を襲撃した「引きこもり青年」が法廷で訴えたかったこと1月22日、判決が言い渡された大分地裁中津支部 Photo by M.Ikegami

 判決は、「半割れ」(求刑より半減)と呼ばれる量刑だった。裁判長は判決理由では、争点となった強盗未遂の罪を認め、被告が抱えてきた発達障害の特性に対する理解もあまり感じられなかった一方で、「音に過敏で、こだわりが強いという特性は考慮すべき」などとして、量刑面で「絶妙なバランスを取った」ようにも見える。

 小学生当時、帰宅した被告の体に痣を見つけたとき、両親は学校の担任教諭に相談した。しかし、「いじめなんてありません」「みんなと一緒にサッカーして活発に遊んでいますよ」などとなかったことにされ、学校は「いじめ」を放置。担任が、嫌がる被告を無理やり学校に引っ張って行ったこともあったと両親は明かす。

 被告が引きこもり状態に陥ったとき、母親は思い切って、市の精神保健施設の相談窓口にも助けを求めた。ところが、当時担当した精神科医から「本人を連れてこないと対応できない」と断わられたという。