さる10月25日、文部科学省が2017年度の「いじめ調査」の結果を公表した。全国の小中高などで把握されたいじめ件数は41万5000件ほど。前年度から約9万件増えた。特に小学校低学年で増加している。小学校で一体、何が起こっているのか。小さなトラブルも把握するように努めた結果とも指摘されているが、必ずしもそうとは言えない。例えば「重大事態」は474件、前年度から78件も増えている。そんな中、2年前、当時小学3年生の長男が深刻ないじめに遭った在京テレビ局の鈴木真治記者が『うちの子もいじめられました』(WAVE出版)を上梓した。鈴木記者自ら語る知られざる「いじめ後遺症」の深刻さや、家族が受けた「いじめ二次被害」の衝撃とは。(文・鈴木真治)
いじめの「隠れた傷あと」
都内に住む40代の私は、妻との間に中学生の長女と小学生の長男の二人の子どもがいます。2年前、当時小学3年生だった長男がいじめに遭いました。家族で苦しみながらも、「いじめ」自体は何とか乗り越えました。しかし、「いじめ被害」とは今もなお、闘っています。
私たちが直面している「いじめ被害」には、二つの側面があります。一つは、「いじめ後遺症」の深刻さです。いじめによって被害者に後まで残る悪影響です。
長男が受けたいじめは、「くさい」「あっち行け」「くっつくな」といった言葉の暴力が中心でした。
長男は不登校になりました。夜は母親が横にいないと眠れず、寝付いてからも毎晩のように「うーん、うーん」と苦しそうに唸る状態が続きました。
また「くさい」と言われたのが心に残っていたのでしょう。お風呂に入ると、「きれいにするんだ……」と呟きながら、いつまでも身体をタオルでこすり、肌が赤くなるほどでした。命を絶つことすら考え、それを言葉にしたこともありました。
イギリスの2015年の研究では、子どものときに同級生から受けたいじめは、大人から受けた虐待よりも深刻な精神的影響を与えるといいます。
東京大学大学院の2014~2015年の研究報告も、子ども期のいじめ被害は中年期に至るまで、抑うつ・不安などの精神疾患発症リスクに加え、肥満傾向、さらに血液中の炎症反応の程度を示す炎症指標といった「隠れた傷跡」としての慢性的な影響を与えることを明らかにしています。
実際、今も長男は救急車のサイレンや雷、怖いニュースなどに敏感です。いじめ被害によって過度に心配症になったのではないかとも感じます。フラッシュバックやトラウマ、性格への悪影響などの「いじめ後遺症」は、長男が成人になって以降も、親として心配し続けなければなりません。