前明石市長の暴言がメディアで注目を集めている。あまり論じられていないが、市長の白黒よりも気になるのは、「役所の盗聴体質」である。明石市だけでなく、全国の役所では盗聴が後を絶たない。しかも、「役所を良くしたい」という動機ではなく、「敵を落として出世したい」という我欲丸出しの役人が少なくないのである。(ノンフィクションライター 窪田順生)

誰もあまり触れていないけれど…
役所内では盗聴が横行している

市長の暴言が問題となった兵庫県明石市役所
敵を引きずり降ろして自分の地位を確保しようという、我欲にまみれた目的で盗聴に及ぶ役人は、実は少なくない。市長の暴言うんぬんよりも、この事実にもっと光を当てるべきではないだろうか Photo:PIXTA

 先週、泉房穂・前明石市長が、立ち退き交渉を7年間もやっていなかった職員に発した「火つけて捕まってこい!」という暴言が大きな注目を集めた。

 当初は「ちーがーうーだーろー」が子どもにモノマネまでされるようになった豊田真由子・前衆議院議員の時のように、音声データがワイドショーを賑わせてバッシングの嵐となっていたが、一部メディアが録音データ全体を紹介したところ、ガラリと風向きが変わった。

 ヤカラ風にまくしたてる前半と打って変わって、後半では、市役所職員は市民の安全を守るために努力を厭わないべきであって、業務を放置するような怠慢は許されない、という「しごくまともな説教」が収められていたからだ。

 この一連の流れを見て、「これだからマスゴミは」と義憤にかられた方も多いことだろう。

 マスコミ各社はみな、今回の録音データを入手していた。だから当然、全体を聞けば、まともなことを言っていることがわかっていたはず。にもかかわらず、第一報ではそのあたりをチョキンと切り取って報じていたからだ。

 ちょっと前、都立高校の教師が生徒を殴っている動画がSNSで拡散されたが、実はこの動画には伏せられていた前半部分があって、そこでは生徒が執拗に教師を挑発して殴るように仕向けいていた。そういう「卑劣な切り取り」を、実は“社会の木鐸”を自認するマスコミは「日常業務」として行なっている、という事実が白日のもとに晒されてしまったのである。

 このあたりは極めて重要な問題なので、ぜひ立派なジャーナリストの方などに追及していただきたいのだが、実は本件では、これまであまり論じられてこなかった、深刻な問題がもうひとつある。

 それは、「役所内で盗聴が横行している」という問題だ。