前任の部長が顧客を引き抜きいて独立したため、甲社の社長は社員を信じられなくなっていた。一方、社員の間では社長が盗聴器を設置、監視していると噂になる。ある日、誰もいないオフィスで部長と主任が飲み会の予定を決めたところ、当日、誘ってもいないはずの社長が飲み会に現れ……。(社会保険労務士 木村政美)
建物設備のクリーニング業を営む。現在の社員は40名。2年前、前任の部長が在職中、担当していた顧客を引き抜いて独立した。それ以来、会社の売り上げが3割落ち、社長は以前の状況に戻そうと苦心している。
<登場人物>
A:社長。50歳。2年前、前任の部長の裏切り行為に遭い、売り上げが大きく減少。それ以来、社員を信じられなくなり社員を監視するようになった。
B:部長。45歳。2年前から現職。部下たちから慕われており、社長も一目置いている。
C:営業主任。35歳。飲み会が大好きでいつも幹事役を務めている。
D:B部長の大学時代の同級生で社労士。
部長の娘のピアノ発表会情報を
知っていた社長の行動
ある日、会社からの帰宅が一緒になったB部長とC主任は、駅へと向かって歩いていた。C主任はB部長に尋ねた。
「部長、確かこの前の日曜日、娘さんのピアノ発表会でしたよね。どうでした?」
B部長はご機嫌だった。
「おかげさまでミスなく演奏できて大成功だったよ」
「よかったですね」
「でもさあ、会場でびっくりしたことがあったんだ」