俊輔へ熱いラブコールを送り続け、移籍を実現させた名波浩監督が言葉を弾ませたことがある。現役時代は左利きの司令塔として活躍し、日本代表の「10番」の系譜にも名前を連ねる指揮官は、俊輔の加入と同時にあるルールを設けている。

「居残って練習したいやつは20分間限定で」

 チーム全体に向けて発しているようで、実は俊輔を対象にしていたと、名波監督は苦笑いしながら舞台裏を明かしたこともある。

「何も言わなかったら、それこそ小1時間はずっと(居残り練習を)やっちゃうから。俊輔が入る前のウチは、ベテランと呼ばれる選手たちが居残って練習することがなかった。それをあいつが率先してやっていることで、すごくいい影響を与えている。シュートやパス、そしてフリーキックといろいろな練習をしているし、相手を務めるゴールキーパーもさまざまな球種のシュートが飛んでくるので、もちろん練習になっているよね」

 俊輔の加入効果もあって、2017シーズンのジュビロは6位へ躍進した。だからこそ出場試合数が16とほぼ半減し、プレー時間は1077分と約6割も減った状況に、俊輔は「こういう状況になったのは計算外だと思うし、特にゴールがゼロというのはひどい」とこう言葉を紡いだことがある。

「ガクッときてしまった分だけ、逆に次のシーズンが楽しみというか。右足首に関してはこれまでの居残りの自主練でシュートを打ちすぎた部分もあって、しょうがないと思っているけど、いろいろな人に診てもらって、このオフの間に(治療を)済ませたい。バランスがおかしくなっちゃっていて、いろいろなところをかばっていたので。中盤を支配するのが自分の強みだし、そういう感覚をもう一度取り戻せば絶対にまだまだやれる、自分のプレーで相手をいなせるという感覚が、昨シーズンも何試合かあったから」

 Jリーグは2019シーズンから外国籍選手枠が変更される。J1においては登録が無制限となり、試合へのエントリー及び出場がともに5人へ拡大された。試合展開が大きく変わる可能性がある状況で、俊輔はJ1残留を決めた直後から頭脳をフル回転させていた。

「個の力や自由さ、楽しさを追求するのも大事だけど、例えばビルドアップの部分などでも緻密な戦術といったものが個の力を引き出し、あるいは助ける形に今はなっている。Jリーグがガラッと変わっちゃってどうなるか分からないけど、クラブもスタッフも選手もそういうスピードについていかないと、同じような結果を招いちゃう。でも、苦しんだことは、はね上がるためのいい材料になる。一歩先を進みながら、プラス、ジュビロらしさみたいなものがあれば」

 6月に41歳になる長丁場のシーズンを戦い終えた時に、真っ白な灰のような心境になっている自分自身を追い求めていく。その過程でジュビロを再び上位争いへ導く使命を課す俊輔の胸中は、サッカーボールを追いかけ始めた頃とまったく変わらない、サッカーを「まだまだ楽しい」と感じられる純粋無垢な思いで満ちあふれている。