16年4月、郭帆とプロデューサーの〓格尓(〓の文字は龍の下に共。以下同)の2人は、中影制片に進捗状況を報告した。中影制片の役員らは、構想の説明書を始め、さまよえる地球(流浪地球)の100年の編年史や3000枚のコンテンツイメージ、8000枚の絵コンテ、ハラハラドキドキで中国テイスト満載のシナリオを目にして心を打たれた。

 その翌日、郭帆は「映画製作を始めましょう」という通知を受け取った。

大規模なセットや小道具で
制作費が底をついても…

 投資リスクが大きすぎると判断した中影制片は、万達影業や北京文化なども誘い、総額1億元以上を投入。郭帆の手に入った予算は、当初1億元(約16億円)だった。ハリウッドがSF映画を製作する際の予算は、通常1本2~3億米ドル(約220億~330億円)で、その差は十数倍だ。郭帆は、「資金の大半をセットと道具、特殊効果に使おう」と決意した。

『さまよえる地球』には1万点以上のセットや小道具が使われたが、その全ては自分たちで作ったものだ。地下都市や氷原、惑星エンジンコントロール室、宇宙ステーションなども実景として作った。“宇宙村”ともいえるこの実景は、10万平方メートルもあり、大型の住宅街に相当する規模だ。

 しかし、1億元をあっという間に使い果たし、製作資金は底をついた。そこで投資会社は数千万元の増資を実施したが、それでも全然足りなかった。郭帆は全財産の900万元を注ぎ込み、プロデューサーの〓格尓も所有していた車を売却した。俳優らも自主的にギャラの引き下げを申し出たし、ディレクターの劉寅も数百万元する設備を自ら購入し、チームに貸した。

 〓格尓は「映画制作手記」で、「映画のために自分の金をつぎ込んで撮影したのは初めての体験だった」と書いている。

 それでも地上の部分の撮影が終わったところで資金が尽き、スポンサーの万達影業は映画製作から撤退した。

 宇宙ステーションの部分については、もともと大物俳優を起用しようと考えていたが、来てくれる人は1人もいなかった。結局、同じく財産を使い果たして『戦狼2(ウルフ・オブ・ウォー2)』を撮影した、監督兼俳優の呉京がノーギャラで友情出演を引き受けた。やがて、製作資金の困窮ぶりを知った呉京は、6000万元も出資した。