人ベースの組織と仕事のベースの組織という視点

――組織のアーキテクチャーとは?

 組織が持つ基本構造のことで、欧米企業と日本企業とで対照的に異なっている部分があります。それを見分けるポイントは、企業の中で「仕事」がいかに定義されるか、そして、仕事をする「人」がどのように組織内に取り込まれるか、の2点です。

 組織とは大きな仕事を分業する仕組みです。言い換えれば、大きな企業目標を部分目標に分けて分業する。その積み上げで組織ができ上がります。

 米国型分業の最大の特徴は、企業目標(経営方針や経営戦略など)を最上位の経営層が設定し、下位層に向けてブレイクダウンし、部分目標として現場にアサインすることにある。これがいわゆるトップダウンであり、仕事は職制を通じて上から下に定義されます。
また、基本的に米国型組織での採用は中途採用です。先に「仕事」が定義され、その仕事に必要な「人」が採用されるのです。こうして「仕事ベース」の組織構造ができていきます。

 これに比べて日本の組織の特徴は、「仕事」ではなく、先に「人」に意識を向けます。組織に採用された人がその成長に伴って、仕事の範囲を広げ、仕事をつくり出していく。そして、人と人とのつながりによって、ときには組織の枠を超えながら仕事がなされていきます。これは、人ベースのアーキテクチャーの組織となります。この場合には、組織を形成する基準として、仕事ではなく人に注目することになる。仕事に人をつけるのではなく、人が仕事をつくっていくのです。

 日本の大卒一括採用では、採用した人間は始めのうち仕事ができません。入社後新人研修を受け、職場に慣れ、同僚上司の仕事を見つつ、自分の仕事のやり方をつくっていく。このことが毎年繰り返され、組織の下から上に向けて人が繰り上がり、仕事をするための人脈ツリーが形成される。

 もう1つ重要な点は、人ベースの組織はトップダウンではなく、ボトムアップで動くということです。自分の部門はどのような目標でビジネスをするかについて、ボトムアップで目標が立てられていき、他部門から出てきた目標とすり合わせをする。