人ベースの日本企業が陥った罠

――組織のアーキテクチャー(基本構造)と人事施策との整合性が重要だということでしょうか?

 たとえば、成果主義は、一言で言えば仕事の成果見合いで担当者に報酬を与えるやり方です。その具体形の1つである目標管理では、仕事の目標の達成に応じて報酬を決めます。だから仕事と人が一対一であると運用が合理的になり、結果の納得性も高まる。そもそも成果主義は仕事ベースの組織アーキテクチャーに整合するやり方なのです。このアーキテクチャーでは仕事と人が一対一になるからです。

 この成果主義を人ベースの組織アーキテクチャーに導入するとどうなるか。人々はボトムアップで仕事を相互に工夫して行っています。仮に「自分の目標です」と目標管理シートに書き込んだところで、紙の上の話でしかない。現実の仕事は、人と人との連携で動いている。目新しくチーム化などと言われなくても、もともと人々は連携プレーで仕事をしてきているのです。

 しかし成果主義が導入された以上、自分の報酬は目標管理シートに書いたことの達成度合いで決まってしまう。となると関連する人や部署、言ってみればチームのメンバーのことを熱心に考慮に入れてはいられない。どうしても自分の仕事を優先する。ここから日本企業にとっての新たな部分最適問題が起きてきたのです。

 フラット化と成果主義を同時に導入した組織で「決められたことしかやらない社員が増えた」「助け合う風土、人を育てる風土がなくなってきた」といった声が聞こえるようになった背景は、組織のアーキテクチャーと人事施策の不整合によるところが大きかったのです。