なぜ、日本企業は強みを失ってしまったのか?
――1970年代から積極的な海外進出を行い、80年代の半ばには、グローバルな市場で“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と言われるまでになった日本の大企業が、その後、グローバルな経済環境の変化の中で、輝きを失ってしまったのはなぜなのでしょう?
日本企業は経済の好不況の波に翻弄されながら、家族主義的・年功序列的組織から能力主義的・成果主義的組織へ移行し、そして再び人とつながりを重視する家族主義的な組織への回帰、さらに経営の効率や成果重視のマネジメントへ向かう、と短期的な曲折を繰り返してきました。人事施策や組織のあり方に関して、日本的なものと米国的なものの間で揺れてきたとも言えます。
問題は、日本企業が自らの組織、その能力に関して、無自覚だったこと、すなわち、自社の組織能力がいかなる要素で構成されているか、本質的な強みと弱みは何であるか、その強みの源泉、その強みを発揮させている構造が何のかについて、科学的に分析し、考察する努力を怠ってきたことにある、と思います。
――その問題は、日本企業のどのようなところに現れたのでしょうか?
日本企業の組織にフラット化・チーム化が導入されたのは米国に遅れること10年の2000年前後でした。注意すべき点は、日本企業は米国企業とアーキテクチャーが異なっていたにもかかわらず、それへの考慮が十分なされないまま、米国で先行した組織のフラット化・チーム化が日本に導入されたことです。加えて、しかも同時並行で、同じく米国から成果主義が日本に導入されました。
結果的にこの2つの組み合わせが多くの日本企業の組織の動きを悪くし、その現場でさまざまな問題を生じさせました。リストラによる人減らし、中間層への業務負荷の増大、現場の疲弊感、目標管理と業績評価の曖昧さ、昇進機会・成長機会の減少などがそれです。