経常収支が大幅赤字になると
労働力の奪い合いが激化

 ここからは余談だ。日本は、巨額の海外資産から巨額の利子配当収入を得ているので、輸出産業が縮小していっても経常収支が赤字になるとは考えにくい。だが、リスクシナリオとして、万が一経常収支が大幅な赤字になったら何が起きるのかも考えてみよう。

 経常収支が巨額の赤字となれば、輸入代金を払うためのドル買い需要によってドル高円安となる。そうなると、輸出企業は「高い給料を払っても労働者を集めて国内で生産して輸出しよう」と考えるので、内需型産業と労働力の奪い合いになる。

 景気という観点からは、「労働力の奪い合いが起きるほど景気がいい」ということになるが、介護の現場で労働力不足が深刻化して介護が受けられない高齢者が増加するといった問題は深刻化するかもしれない。 

 まあ、元気な高齢者が働くようになれば、そこまで深刻な労働力不足は発生しないと思うが、一応リスクシナリオとしては頭に入れておきたい。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)