改めて考えれば誰でもわかるはずなのに、このような声がけをうっかりしてしまっている上司が、実際に少なからずいるようなのだ。

 上述の声がけは、ある会社で実施した従業員の意識調査で浮上したものだ。モチベーションを下げさせる上司にありがちな言葉について書いてもらったところ、このような言い方で仕事を与えている上司が少なからずいることがわかったのである。

 そこで、その当事者であるA課長と面談したところ、事情がわかった。A課長は、元々ざっくばらんな言い方で仕事をお願いしていたが、上述のような言い方に変えたのは、ある年を境に傷つきやすく、被害者意識を抱きやすい若手が多くなってきたからだという。イマドキの事情が関係していたのだった。

 それは、部下から“パワハラだ”と騒がれないようにていねいな言い方を心がけていたことと、さらには部下から過重労働を押しつけられたとみなされないよう気をつけることといった通達があったためだ。

 つまり、A課長としては、部下から過重労働を押しつけられたと思われないように、「あなたにも無理なくできる」とか「そう難しい仕事じゃないので」といった言い方をするようになったのである。

 部下を安心させるつもりでそのような言い方をしたのであって、「仕事ができないとみなしている」とか「期待していない」といった思いは微塵もない。でも、言われた方は、安心するどころか、かえって「仕事ができないとみなされている」「期待されていない」と不安に思ってしまう。

 上司には決して悪意がないものの、その言い方のせいで、部下はヤル気を失ってしまう。このような上司と部下のスレ違いが、意外と多くの職場で起こっている。

 部下から「上から目線」と反発されないような丁寧な言い方とか、部下が負担に感じないような言い方を過剰に意識するあまり、マネジメントでうっかり部下のやる気を削いでしまっている。皆さんの職場でも、そんなことになっていないだろうか。

 ここでの問題は、どんな言い方が部下のヤル気を上げるのか、あるいは下げるのかといった心理法則をきちんと理解していないところにある。