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自分の会社にたいした価値はない――。これまで、第三者への承継(M&A)を諦めてきた経営者でも大丈夫。買い手が群がる五つの条件を提示し、会社を高く売る方法を伝授しよう。*本記事は『週刊ダイヤモンド』2018年1月27日号『大量引退時代の最終決断 廃業or承継』を再構成したものです。

 創業1889年の小野工業所(福島県)は、M&A(合併・買収)に積極的な建設会社として知られている。

 2016年に、地盤改良工事に強みを持つアラタ工業(千葉県)を買収するなど、これまで5件のM&Aを実施してきた。他の業種と同様に、建設業界でも経営者の高齢化や後継者不在を理由に、事業承継に絡むM&A件数が増えているのだ。

 買収の狙いについて、小野晃良・小野工業所社長は、「ウチの会社が欲しいのは、人材と工事のノウハウだけ。ハコ(事業所や工場)だけ取得しても従業員が辞めていっては身もふたもない」と言い切る。人材の獲得が、買収の最優先目的になっているのだ。

 それぐらい、建設業界における人手不足は深刻だ。国土交通省の試算によれば、10年時点では330万人いた建設労働者が、25年以降は100万人も減ってしまう。慢性的な人材不足を解消する手段として、事業承継を目的とするM&Aが脚光を浴びているのだ。

建設業、調剤薬局、運輸業といった極端な「人手不足業種」の企業は、M&A市場で高く評価されている。Photo:iStock/gettyimages

 昨今、事業承継のハードルが格段に下がっている。それには、三つの背景が考えられる。

 第一に、経営者が会社を閉じたり、身売りしたりすることに対するアレルギーが薄れていること。

 第二に、M&Aの買い手の動きが活性化していること。

 最後の第三は、政府・行政の支援が手厚くなっていることだ。

 2017年末に「事業承継税制」が抜本改正された。それに加えて、廃業問題が地方経済へ与える悪影響を懸念した全国の自治体が独自の事業承継プランをぶち上げるようになった。その代表格が三重県で、鈴木英敬県知事の主導で3月に政策パッケージを発表する予定だ。