団塊世代の大量引退時期を控えて、にわかに活況を呈し始めた事業承継マーケット。とりわけ、M&Aの買い手や仲介事業者が続々と市場参入しており、事業承継を目的としたM&Aの件数が激増している。その内実を3分でスッキリ解説する。*本記事は『週刊ダイヤモンド』2018年1月27日号『大量引退時代の最終決断 廃業or承継』を再構成したものです。
2017年末、事業承継税制が抜本的に改正された。その直後、ある大手税理士事務所には企業の経営者や幹部が大挙して押し寄せていた。
税理士、公認会計士などの士業界は、久方ぶりのビッグイベントに沸いている。
ある地方銀行担当者は、「正直まさか!? と何度も確認したくらいの思い切った改正だ。税務当局としては、税を取りっぱぐれるぐらいのレベルのものではないか」と驚きを隠さない。
確かに、承継時の贈与税・相続税の支払い負担がゼロになるといった改正は、「納税を1世代スキップさせるようなもの」(同)だ。
政府が承継税制を抜本改正するに至ったのは、迫る大量廃業に対して強烈な危機感があるからだ。そこに、民間の問題は民間で解決するという従来のスタンスはない。
オーナー経営者の考え方にも変化が見えるようになった。
親族・従業員への承継にせよ、第三者承継(M&A)にせよ、事業承継には時間がかかる。70歳までは何とか持ちこたえようと漠然と考えていた経営者でも、最近は、向こう10年をにらんだ承継計画を策定するケースが増え始めている。そうなったのは、M&Aや廃業に対する抵抗感が薄まっていることも影響している。