民主化運動の理念に固執
「南北融和」最優先の外交政策

 文政権の安保外交政策の特徴は、北朝鮮との融和を最優先し、朝鮮半島(韓国では韓半島)問題を南北で解決することを原則にしていることである。

 昨年の1回目の南北首脳会談後に発表された板門店宣言(2018年4月27日)に、「…わが民族の運命はわれわれ自ら決定するという民族自主の原則を確認し、…」という文言が盛り込まれた。

 従来の「自主的に解決していく」からわずかな修正に見えるが、民族の独立を重視し、米国の関与なしに、南北で解決していく意図があるのは、明瞭だ。

 だがこのことは、米国との間であつれきを生み出す要因になった。

 北朝鮮の非核化が進展していないにもかかわらず、文政権が南北融和と経済交流再開に前のめりになっているからだ。

 文政権の中枢にいるかつての民主化運動指導者たちには、朴正煕以来の軍事政権を背後で支えた韓米軍事同盟を否定的に考える傾向がある。

 南北融和が進めば、在韓米軍は不要になるとの発言が飛び出し、北朝鮮側の主張と共鳴しあうことになる。

 米韓両国は北朝鮮への対応を作業部会で調整することになったが、関係の軋みは簡単には解消されそうにない。

 南北融和を最優先する姿勢は、対日外交にも変化をもたらすことになっている。

 文大統領は就任後、歴史問題に関して原則的な立場を貫く一方、未来志向で日韓の新たな友好関係を構築する「ツートラック戦略」にもとづき協力を進める意向を示していた。

 だが、結果として、歴史問題に対する原則的な姿勢が関係の悪化を招いた。

 昨年10月30日、徴用工訴訟問題で、韓国の最高裁判所にあたる大法院が日本企業の損害賠償を命じた判決後、韓国政府は司法の判断を尊重しつつも、日韓関係に否定的な影響を及ぼすことがないように取り組むと表明した。

 しかし、現在まで具体策は出されていない。

 文大統領は年頭の記者会見で、「韓国は三権分立の国で判決は尊重せざるを得ない」「徴用工判決を政治問題化することは賢明でない」と発言。戦後、日韓政府で結んだ請求権協定をほごにするかのような姿勢が、日本政府の反発を一層、招くことになった。