政治の季節とは、毎年3月上旬から中旬にかけて約2週間に渡って北京で開催される“両会”を指す。その名の通り2つの会議から成り、同時進行で行われる。全国政治協商会議は3月3日、全国人民代表大会は3月5日に開幕する予定だ。後者では政府の首長である李克強首相が『政府工作報告』を発表し、昨年度の“業績”を振り返り、今年度の目標を発表する。

 毎年注目されるが、今年とりわけその注目度が高いのが経済成長目標であろう。上記の4つの軸における「成長」とも同義語であるが、“文化大革命”(1966〜1976年)が終わり、中国共産党は鄧小平のリーダーシップの下その“工作重心”を「階級闘争」から「経済建設」へと転換し、その後改革開放という国策の中で、紆余(うよ)曲折を経つつも発展してきた。

 この路線は今日に至っても基本的に変わってはいない。「経済基礎決定上層建築」という中国語の格言にも体現されているように、経済成長を巡る各種状況こそが政治の安定性と権威性を決定づけるというのが中国共産党政治の実態であり、共産党指導部もそういう観点から経済と政治の関係性を認識、対応しているように見受けられる。

 中国共産党の正統性という観点からすれば、イデオロギーも一つの軽視できない要素であり尺度である。習近平政権が発足して以来、“マルクス主義中国化”、“習近平新時代中国特色社会主義思想”、“中華民族の偉大なる復興”、“社会主義核心価値観”など政治におけるイデオロギー色は前任である胡錦濤政権よりも断然強まっているし、北京や地方を歩いていても、街の到るところにこれらのイデオロギーを宣伝する横断幕やポスターが貼られている。

 しかしながら、上記のように、共産党の正統性は結果を出すことで初めて人民から信任を得られる。

 今を生きる中国人民は街中でこれらのイデオロギーが描かれた横断幕を目にして、それを以て共産党に信任を与えるほど“時代遅れ”ではない。彼ら彼女らは、日々の生活の中で自分たちがどれだけ物質的な果実を得られているか、衣食住が満たされているか、教育、医療、環境、食の安全といった自分や家族の生活や健康に直接影響を与える部分が確保されているかといった観点から、共産党に信任を与えるか否かを感じ、考え、実際の行動に移すのである。

 その意味で、経済こそが昨今における中国共産党の正統性の根源であり、だからこそ、それに対する党指導部の立場や自信を直接的に反映する全人代における経済成長率の発表は極めて重要なのである。

 そこで発表された数字によって、人々は自分たちが今どのような経済環境で生活しているのか、これからどのような物質的果実・環境を得られうるのかを判断するのだ。