筆者は2018年、ホンダのクルマ数台で長距離ドライブをやってみた。その1つが英国工場で作られたシビックハッチバックというCセグメントコンパクトモデルだったのだが、そのパフォーマンスたるや、素晴らしいものがあった。

 極太のスポーツタイヤを路面にしっとり貼りつかせるサスペンションのセッティングは出色で、Cセグメントに力を入れている欧州メーカーでもシビックハッチバックに対抗するのは大変であろうと思われたほどだった。

 そのシビックハッチバックだが、欧州市場ではほとんど存在感を発揮することができなかった。もちろんホンダブランドが弱体化している中で販売スコアを伸ばすこと自体、並大抵のことではないのだが、クルマの“出来の良さ”を思うと哀れですらある。

 理由の1つとしてホンダマンが挙げるのは、決まってデザインである。

「シビックと言っても、セダンとハッチバックではターゲットとなる市場が違う。セダンはアメリカ、ハッチバックは欧州。ですが、今のシビックハッチバックはデザインがモロにアメリカを向いていて、欧州ユーザーの心には響かなかった。

 しかも、全長もCセグメントのハッチバックとしては長すぎ、これもネガになりました。シビックに限らず、研究所の仲間内ではしょっちゅう話題になるんですよ。このクルマ、『誰のために作るんだろうね』って。我々はまず、自分たちが何をやりたいのかということを明確にすべき」(前出の本田技術研究所幹部)

「自分たちが何をやったらいいのかわからない」という病気はもう、かなり前からホンダを深々とむしばんでいる。

ホンダというのは
よくよく運のいい会社

 前々社長の福井威夫社長時代、ホンダはアメリカのセミ高級車チャネル「アキュラ」を日本展開しようとしたことがある。もちろんトヨタが「レクサス」を日本市場に導入したことへのライバル心をむき出しにしてのことだ。

 しかし、驚くことに社内で誰が「アキュラをやりたい」と言ったのかは、実は明確でなかったのである。アキュラをやろうとした一派は、かつて北米ホンダ社長を務めた人物がやりたいと言っているということを根拠に、プロジェクトを推進した。