しかし、どこまでも慎重な丁はここで浮き足立つことなく、一つの実験を試みた。

「南京に店をオープンさせたの。ここで成功すれば本物。それを見極めたかったんだ」

 どの店舗も大繁盛していたが、“侵略国”である日本の料理を出す丁の店に、反感を持つ人々も少なからずいたのは事実だった。かつて“大虐殺”のあった南京はとりわけ反日の空気が濃く、だからこそ丁はそこでの成功にこだわったのだ。

「結局、大成功。これで全国どこへ行ってもやっていけるぞと確信したんだ」

 2001年のことだった。ここから「大漁グループ」は一気に全国展開を推し進めることになる。

契約書はなし
独特の経営スタイル

「大漁グループ」の全国展開は、いわゆるフランチャイズ方式とは異なる、非常に独特なスタイルだ。まず、進出するエリアを戦略的に決めたり、各店舗を統括したりする本部機能のようなものがない。当然、直営店という概念もない。では、どんなスタイルなのか。

「俺と“義”で結ばれた7人の人間たちが、中国各地でおのおの独自に『大漁』を経営する。契約書なんてない。全部、口約束。信用だけで成り立っているの」

 分かりやすく言えば、創業者の丁に許され、『大漁』という看板を使える人間が丁の他に7人いて、おのおの会社を作って独自にチェーン展開しているということである。資本関係はどうなっているのか。