私は自他ともに認める読書好きだ。
だから以前、読書術の本を著したことがある。
このたび私は『できる人の読書術』という本を著したのだが、
以前に著した本と同じく読書術がテーマになっている。
種明かしをすると、2冊の本の担当編集者は同じ男である。
「編集者になったのは、堀先生とお仕事がしたかったからです」
と公言して憚(はばか)らない男だ。
それがどこまで本当なのか、私にはわからない。
この男は、前回読書術を上梓した出版社を辞めて、違う出版社に転職したらしい。
いまどきは、どの業界でも転職が当たり前になっている。
そして転職先の出版社で初めて出した企画が、私の読書術の本だという。
彼の企画書は編集会議を無事に通り、いの一番に私のところへやってきた。
「先生の読書術の本をまた出したいと思います。ぜひお願いします!」
そう懇願されて、私は正直少し戸惑った。
「前著で言いたいことはあらかた書いている。二番煎じにするわけにはいかないし、かといって、まるきり新しい話をするわけにもいかない。これは一筋縄ではいかないぞ」と思ったからである。
しかし、この男と話をしているうちに、突破口が見えてきた。
AI時代、最強の武器は読書
物事は「どういう角度から見るか」と「どこまで深く考えるか」で、
景色がガラリと変わる。
それは読書に限らず、すべてにおいて言える。
その突破口を足がかりに、依頼に応えて読書術の本を著すことにした。
今回は角度を変えて、未来志向で読書術を掘り下げてみた。
具体的には、AI(人工知能)が、生活にもビジネスの世界にも、
現在以上により深く浸透するようになる近未来を想定した読書術だ。
このところテレビCMでも頻繁に見かけるようになった自動車の自動運転技術や、
音声で情報の検索や家電の操作を行うスマートスピーカーの根幹には、AIがある。
自動運転もスマートスピーカーも、便利には違いない。
しかし、AIが想像を超えるスピードで進化を続けると、ビジネス環境はすっかり様変わりする。
少し前までビジネスパーソンに欠かせない3本柱は、
「英語」「ITスキル」「金融リテラシー」とされてきた。
だがAI時代には、この3本柱があっても、優秀な人材として正当な評価を得られなくなる。
英語もITスキルも金融リテラシーも、AIが肩代わりできるからだ。
時間をかけて習得した知見が、一夜にして陳腐化する恐れさえある。
近い将来、汎用型AIの能力は人間に肉薄し、
多くの仕事がAIとロボットという組み合わせに奪われるという悲観的な予測もある。
そう聞くと、絶望的にもなる。
その絶望の底から救ってくれるのが、他ならぬ読書なのだ。