空室のあるビルスルガ銀行事件が、不動産市況の変わり目をもたらしている。「大受難時代」をサラリーマン投資家はどう乗り切るべきか Photo:PIXTA

スルガ銀事件で不動産融資が縮小
投資家はどんな対策を考えるべきか

 不動産市況の変わり目は、今考えるとスルガ銀行の書類改ざん事件だった。事件の後、地銀を中心に個人に対する不動産融資の潮目は拡大から縮小に向かった。金融庁からの締め付けが、今やすべての金融機関に及ぼうとしているからだ。今回の不動産市況反転の主役は金融庁なので、不動産に投資する人はこれを踏まえて対策を考える必要がある。

 金融庁がやりたいのは地銀再編である。都市銀行はおおよそ30行が4つのフィナンシャルグループに再編されたのに対して、地銀・第二地銀は100、信金・信組は400もある。金融を取り巻く環境は大手以上に中堅以下で厳しい。今回のスルガ銀不正融資は、金融庁の厳格検査におあつらえ向きの大義を与えたことになる。

 不動産は、ローンを組まなければ買えない人が大半だ。だからこそ、不動産投資をする人に対する融資を止めれば、不動産を次に購入する人が買える価格が下がるため、相場が下がることになる。過去に行なわれた最も有名なこの「操作」は、日銀が行ったもので「総量規制」と呼ばれ、1980年代のバブルを終焉させるために実施された。総量規制とは、不動産への融資資金の総量を決めてしまう方法だ。

 それ以外にも、不動産への資金を止める方法はある。金利を上げることだ。金利を上げると、期待利回りと借入金利との差(これはイールドギャップと呼ばれる)が一定量必要な投資家にとっては、期待利回りを高くして、つまり物件価格が安くなる状況でしか買えなくなる。これを行うのは主に日銀になるが、当面金利が上がる理由はないので、起こることはほぼないだろう。

 今回の主役は金融庁だけに、金利などを動かすことはできない。いわゆる口先介入をするわけだが、その論法はローン比率(専門用語ではLTV)で説明できる。

 ローン比率とは、物件価格に対するローンの割合を指す。9割なら、頭金を1割用意することになる。これまで9割だったものが8割、7割、6割となっていくと、用意できる頭金が足りない買い手は買えなくなる。たとえば、頭金で1000万円の用意がある人は、ローン比率9割なら9000万円のローンを借りて1億円の物件を購入できる。このローン比率が8割になると、同じ頭金では買える価格は半減し、5000万円になる。7割で3333万円、6割で2500万円という具合に、融資の厳格化は不動産投資にとって「効果覿面」なのだ。