しかし、組革研で5日間にわたって仕事モデルと格闘した結果、「今までの自分は最悪のリーダーだった」と自覚するに至ったのだという。樋口は語る。

「部下たちの『どうしましょうか』と同じようなことを、自分もやっていたことに気づかされました。私は彼らの上司であると同時に、社内では1人の部下でもある。社長じゃありませんからね。振り返ると、組革研に参加するまでの私は、課題なりトラブルを上司に相談することで、自分の責任を上司に丸投げしていただけということに気づきました。自分で本気で解決策を考えた上で上司に相談するならいいんです。しかし、私はそうじゃなかった」

「さらに、部下に対しては指示やアドバイスをすることが上司の役目だと思い込んでおり、それをしていれば仕事をしたつもりになっていた。当然、部下は受け身になる。そうなると仕事の本当の楽しさ、喜びなど感じるはずがない。私が奪っていたんです。こうしたことを組革研への参加ではっきりと痛感させられました」

答えは言わず「どう考えているのか」を
問い続けるのがリーダーの役目

 組革研から職場に戻った樋口を待ち受けていたのが前述のトラブル。だが、樋口は固く心に決めていた。

「指示はしない。その代わり、お前はどう考えているのか、何のためにやっているのか、とひたすら部下に尋ねる。指示がなく、何をすればいいのか教えてもらえないのだから、部下は自分で必死に考えるしかない。トラブルがどうなっているのか、必死に調べ、考えるわけです。その結果、出してきた答えにはきちんと応えてあげる。それはおかしいんじゃないかとか、その線でいったらいい、とか。時間がない中、焦りとの戦いでしたが、あのときは何とかそうした態度を貫けたと思います」

 結果的にトラブルは解決。何とか製品化にこぎつけることができた。

「みなで一丸となることができた結果の解決でした。私や部下の意識や行動がこれで急に変わったわけではありませんが、少なくとも変わる契機にはなったと思っています。以来、確実に職場から『どうしましょうか』という声が聞こえなくなっていきました」

 切羽詰まった“状況”が、リーダーである樋口を変えた。樋口が変わったことで、部下たちの意識にも変化が生じはじめた。最後に樋口は、笑顔ではなく真剣な表情で語った。

「『人は自分が困れば必ず動く』。組革研でたたき込まれた言葉ですが、今はそれがよくわかります。あのとき自分は本当に困っていました。それで本気で変わろうと思えた。リーダーの私が変わったら、部下にも火がついた。いい連鎖が生まれたと思いましたね。まだまだ至らぬことばかりですが」

>>後編は3月7日(木)公開予定です。