第4次産業革命による都市の在り方
「スーパーシティ特区」への期待
2月14日に開催された特区諮問会議で、加計学園問題で有名になった国家戦略特区に加え、新たに「スーパーシティ特区」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai38/shiryou2_1.pdf)という制度を創設することが決まりました。
この新たな特区は、その詳細を見ると、安倍政権の過去の経済政策の中でもかなり大きな改革と言えますが、なぜかほとんどのマスメディアがそれを詳しく報じていません。いったい何が起きたのでしょうか。
マスメディアが報じないため、おそらくほとんどの読者がこの制度について知らないと思いますので、まずスーパーシティ特区の制度について説明しておきます。
第4次産業革命が進む中、世界ではネット企業と都市(自治体)がタッグを組み、 AIとビッグデータをフル活用して都市や社会のあり方を根本から変えようという動きが、急速に進展しています。
たとえば、中国の杭州市はアリババと組んで、AIで道路のライブカメラの映像を分析し、信号機のコントロールや警察への通報を自動で行えるようにして、交通渋滞を緩和しました。
また、カナダのトロントはグーグルなどと組んで、再開発されるウォーターフロント地区において、ゴミの自動収集など様々な行政分野でデータを活用した取り組みを進めようとしています。ドバイやシンガポールでも同様の取り組みが進んでいます。
第4次産業革命の進展により、企業のビジネスのみならず、またインフラの管理や公共サービスの提供といった行政分野においてもデータの重要性が大きく高まり、データの解析を通じてそれらの在り方を新しくデザインし直す動きが進んでいるのです。
こうした世界の動きを踏まえると、日本でもやる気のある自治体がネット企業と組んで第4次産業革命の果実を最大限取り込み、日本の社会風土に合った最先端の社会の在り方をデザインし、住民や企業の利便性を向上させられるようにすることが必要です。
ただ、既存の国家戦略特区の制度でそれを実現するのは不可能です。自治体が規制改革の要望をして、該当する規制を所管する政府の省庁と合意できた場合にのみ、特区内で規制改革が実現する仕組みだからです。このプロセスは非常に時間がかかるので、第4次産業革命が急速に進む中で機動的に新たな取り組み(=それに必要な規制改革)を行うことは困難です。