損をしたくないと思い
現状を変えることに抵抗

 行動経済学の基礎的な理論である「プロスペクト理論」によれば、人間は「本質的に損失回避的である」といわれる。もちろん誰もが損をしたくないのは当然だが、問題はあまりにも損をしたくないという気持ちが強いため、リスク回避的になる人が多いということだ。

 利益を得ようと思えば、損失が発生する可能性も覚悟しなければならない。言い方を変えれば「リターンを得るためにリスクを取る」ということだ。ところが、人間は本質的に損失回避的であるため、利益を得ることを犠牲にしてでも損失は避けたいという心理が強く働く。

 その結果、現在の状況を変えようとすることに対しては、強い抵抗感が生じる。なぜなら、良かれと思って変えようとするわけだが、変えたからと言って必ず良くなるとはいえない。特に自分がよくわからないことや先行きが不透明なものほど、不安が大きくなるからだ。

 もし変更した結果、現在よりも悪くなってしまったらどうしようと心配する気持ちが強くなるため、変えることに抵抗感が生じる。これが現状維持バイアスといわれる心理だ。

 格安スマホへ変更することを例に考えてみよう。多くの利用者はこう考えるだろう。

「節約を指南する雑誌や記事を読んでいると、確かに変更することによって毎月のコストは安くなるようだ。ところがキャリアメールが使えなくなったり、面倒な手続きをしなければならなかったり、通信速度も遅くなったりするというデメリットもあると聞く。だとすれば、変えたことによる不便さは今よりも大きくなるかもしれない。それなら今のままでもいいか」