若いうちに自分の引き出しをいかに増やせるか
山口 ブランドマネジャーやその上のCMOになりたい人は、若いうちにどんなことに取り組むべきでしょうか。
安藤 結局、マーケティングの仕事は「モノを売る」ことですよね。自分が「面白い」「いいな」と思うモノや、世の中で話題になっているモノについて、どこに惹かれて何を面白いと思ったのか、なぜこれが多くの人にウケているのか。好奇心をもって解析するクセをつけたほうがいいですね。というのも、CMOぐらいになると、目の前にある課題について、自分の引き出しの中にあるものを組み合わせながら、その場で考えて即座に解決策を組み上げられないといけない。「持ち帰って検討する」「みんなで考える」ではなく、アイデアの瞬発力が重要なんです。そのためには、多くの引き出しを持てるように、若いうちから鍛えておいたほうがいいですね。
山口 マーケターによっては、ターゲットの気持ちが理解できる商品サービスであれば色々な施策が思い浮かぶけど、自分の知らないターゲット向けの商品サービスだと手も足も出ないという方がいます。その点、日清食品の場合は、カップ麺というカテゴリ特性から、メインのターゲットが20-40代の男性と割と統一されていて、そこを深堀して理解してきている感じですか?
安藤 自分が知らないターゲットについては、メチャクチャ勉強するしかありません。我々の場合も、2016年度は「若者」層について勉強して、翌年に若者向けのブランドコミュニケーションを展開しました。同じように2017年度は「シニア」層について勉強して、翌年にヒット商品が生みだすことができました。続く2018年度は、「女性」層について勉強して……と、常にターゲットのことを深く知ることから始めています。
山口 いま海外展開も強化されていますが、商品やコミュニケーションの面で、海外の事例を参考に日本市場で取り入れられることもあるんですか。
安藤 常にアンテナを張って、世界中の面白いモノ、新しいモノを取り入れています。ただ、最近はSNSの発達もあって、日本と海外の境界線は確実になくなってきました。「カップヌードル」や「カレーメシ」のCMを海外の人たちに見てもらうと、言葉がわからなくても爆笑してくれる。セリフを翻訳すれば、さらに面白がってもらえる。数年前は国ごとにニュアンスを変える必要があると思っていましたが、今は世界中どこに行っても日本のノリのままでいいんだと気づきました。
山口 コミュニケーションの地域性に対して、慎重になりすぎる必要はなかったわけですね。
安藤 もちろん、政治的・文化的な差異には十分な配慮が必要ですが、日本でウケるネタは海外でも十分に通用する。カップヌードルの「SAMURAI」シリーズなどは、日本よりも海外のほうが盛り上がったくらいですから。
山口 日清食品はやりたい放題にボケているように世の中からは見えていると思いますが(笑)ものすごくきちんとした会社だとよくわかりました。
安藤 好き勝手にやっていると思われがちですが、実はコワくてコワくて仕方ないので、すごく計算しています。朝令暮改じゃ効かない。朝令朝改でいいからと、何度も計算して考えてるんですから(笑)。