日清食品グループが求めるCMOの要件とは?

朝令朝改も辞さない 日清食品におけるマーケティングの神髄山口義宏(やまぐち・よしひろ)
インサイトフォース代表取締役
東証一部上場メーカー子会社で戦略コンサルティング事業の事業部長、東証一部上場コンサルティング会社でブランドコンサルティングのデリバリー統括などを経て、2010年にブランド・マーケティング領域支援に特化した戦略コンサルティングファームのインサイトフォース設立。大手企業を中心にこれまで100社以上の戦略コンサルティングに従事している。著書に『デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール』(翔泳社)など。東京都生まれ。

山口 マーケティング力を強みとし、社長みずからがクリエイティブも含めてリーダーシップを発揮する日清食品ですが、グループ全体のCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)になる人の要件とは?

安藤 初代のCMOは私でした。実績は必須ですが、何よりも「面白い」ことが一番重要ですね。

山口 CMOは、各ブランドの開発・生産に至るまで統括し損益の責任も負っているブランドマネジャーから引き上げられるんでしょうか。

安藤 そうですね。ブランドマネジャーが将来のCMO候補になります。

山口 ブランドマネジャーも現場から登用されるんですか?あるいは、外から採用することもあるのでしょうか。

安藤 両方です。刺激が必要なときは外部からも登用しますし、社内で公募する場合もあります。当社は、職務年俸制といって役職ごとに年俸が決まっているので、若手がブランドマネジャーに登用されると給料が倍近くにアップすることもあります。

山口 面白いですね。日本の会社だと、若手の場合は役割と給料がそこまでリニアに連動しないケースが多いなか珍しいです。

安藤 当社では、年齢は関係ありません。このポジションに必要とされる役割や責任を果たせるのであれば、これだけの年俸を支払うと制度化しているんです。公募でブランドマネジャーになって結果を残した若手は、その後も別ブランドのブランドマネジャーになったり、事業会社のマーケティング部長にステップアップしていくこともあれば、任期が終わり元のポジション戻って給料が下がる、というケースも普通にあります。

山口 すごく明快ですね。

安藤 今年、「カップヌードル」のブランドマネージャーに40代半ばの若手を抜擢したんです。小さいブランドであれば、30代のブランドマネジャーもいますね。

山口 日清食品さんでは、「面白さ」「おバカ」というキーワードが常に出てきます。ただし、本人はそんなに面白くないけど、面白いクリエイターとか人材を使うのがうまい人もいますよね。そういうタイプのブランドマネジャーもいらっしゃるんですか。私みたいなタイプは、そもそもが面白くない(苦笑)ので、本人の面白さが必須だと、かなり厳しいなぁと思ってしまうのですが……。

朝令朝改も辞さない 日清食品におけるマーケティングの神髄「当社で仕事に年齢は関係ない」と断言する安藤社長

安藤 「どん兵衛」の前ブランドマネジャーは、まさにそういうタイプでした。とても真面目で、まったく面白い話はできなかったんですが、彼が「どん兵衛」を担当している間にブランドコミュニケーションは劇的に面白くなっていって、4年連続で過去最高の売上を達成してしまった。でも、彼自身は最後の最後まで堅物でしたけどね(笑)。

山口 クリエイティブ性というか、生粋の面白い人って、後天的なものではない気がするので、励まされる話を聞けました。

安藤 理想を言えば、コピーや簡単なCMコンテを自分で描けると話は早いんですが、日清食品らしいクリエイティブを理解して、それに向いているクリエイターを何人か挙げることができれば、それでいいと思ってます。