どういうことか。当初、ルノー側は、ルノーが日産会長と日産取締役会議長(日産の定款で会長が取締役会議長を務めることが決まっている)のポストを占有する方針を示していた。

 だが、蓋を開けてみれば、日産の会長ポストは空席、取締役会議長は社外取締役が就任(榊原氏を
想定)、取締役会副議長にジャンドミニク・スナール・ルノー会長が就くラインで調整されている。

ルノーのスナール会長(右)とボロレCEO(最高経営責任者)ルノーのスナール会長(右)とボロレCEO(最高経営責任者)。日産とルノーの確執が解消されたわけではない Photo by Fusako Asashima

 日産の首脳人事においては、日産の独立性を尊重し、ゴーン氏時代に比べればルノーの影響力を若干抑えた。

 それでも、日産、ルノー、三菱自動車の3社連合の“司令塔”とも言うべき新組織「アライアンスオペレーティングボード」の人事では、ルノーが優勢を維持。主要4ポストのうち、ルノー側が2ポスト(スナール会長、ティエリー・ボロレ・ルノーCEO(最高経営責任者))を押さえた。

 ゴーン氏の電撃逮捕以降、関係がギクシャクしている日産とルノー。その権力争いの落とし所を探ろうとして、両社が互いに歩み寄った“バーター取引”のようにも映る。

 ある日産幹部によれば、「(アライアンスボードのみならず)日産のポストにもこだわるルノー側を粘り強く説得したのは、ルノー出身のフィリップ・クラン日産CPLO(チーフ・プランニング・オフィサー)だった」と言う。

 本来、今の日産とルノーのアライアンス経営陣に求められているのは、1999年の提携当初の原点回帰に立ち返り、ビジネスの経済合理性で相乗効果を目指す姿のはずだ。

 ところが、「榊原氏人事」に見え隠れするのは、ガバナンス改革を軽視し、日産とルノーの妥協点を重視する経営姿勢である。ガバナンスの反省なき新アライアンスの登場は、新たな独裁者を生む土壌にもなりかねない。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 浅島亮子)