起立時の血圧が座った状態の血圧より20以上下がるときは起立性低血圧症と診断していますが、常に血圧が低い低血圧症の方で、起立性低血圧症でもあるという方は多く、全体の4割くらいが重複しているといわれています。

 あなたも、普段の血圧もまあ、低血圧気味ではありますので、治療は全体の血圧を底上げすることと、血の巡りの改善を中心に行います」

 篤子さんは、目の前の霧が一気に晴れていくような気がした。ちゃんとした病名を言ってもらったおかげで、後ろめたさからも解放された。

 治療は漢方薬の服用に加え、立ちくらみなどが起きにくくする動作の指導、血圧を上げる食事療法、血の巡りをよくするための運動と筋力強化の4本柱で行われた。就寝時以外での弾性ソックスの着用も勧められた。

 考えてみれば、篤子さん夫婦の食生活は、成人病対策を意識した塩分控えめの高血圧予防食。晋平さんと篤子さんでは、真逆の血圧対策が必要だったのだ。といっても今さら塩分濃い目の食事は食べる気になれない。

「起立性低血圧みたいな、血の巡りに関する病気は鍼灸(しんきゅう)が効くみたいよ。全身から治してくれるんだって」

 という友人のアドバイスに従い、鍼灸治療にも通った。

 結果、症状はじわじわと回復し、篤子さんは発病前の元気さを取り戻すことができた。どの治療法が効いたのかは分からない。恐らく全部の相乗効果だろうが、再発への不安は消えない。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)