ただ、「理不尽なものを受け入れる」「根性」といったものを、完全な悪としてバッサリ切り捨てていいものなのか、と戸惑う人もいるだろう(筆者もそう断定してしまうことに、若干のためらいがある)。なぜなら、こうしたものは、社会に出ればいくらでも直面する「試練」でもあるからだ。

新卒の会社を1年で辞めた理由

 今でも時々思い出し、自分の中で消化しきれていない新入社員の時の記憶がある。

 入社して間もない頃から、「繁忙期は休みが取れないよ」と先輩に聞かされていた。「まあ、会社員とはそういうものなのかな」となんとなく受け入れていたのだが、その繁忙期の週末に、楽しみにしていたバンドのライブがあることがわかった。

 どうしてもそのライブを見に行きたくて、休日出勤をしないで済むように営業ノルマを達成しようと、必死に働いた。新入社員なりにいろいろ営業の策を練り、早朝出社、残業も積極的にこなした。そして、なんとかライブの前にノルマを達成したのだ。たしか、配属先では一番早い達成だったと記憶している。

 しかし、上司の下した判断は、「ノルマを達成しても休日出勤すべし」というものだった。理由は、「他の人が終わっていないから」というものである。筆者からすると、先輩たちはどうせ休日出勤をしなければいけないことがわかっていたため、あえてギュウギュウにスケジュールを組まず、期限までに無理なく達成する算段をしていたように見えた。おそらく、個人のノルマなんかよりも、スタッフ全員で休日を返上し、繁忙期を乗り切る、という一体感の醸成のほうが大切だったのだろう。結局、筆者はその会社を1年で辞めてしまった。