平成の期間、ライブドアや村上ファンド、西武鉄道などを巡る「証券取引法」違反事件が相次いで摘発され、国民の注目を浴びた。同法は「証券市場における有価証券の発行・売買その他の取引について規定」した法律で、2007(平成19)年に「金融商品取引法」に名称変更された。証取法は戦後の1948(昭和23)年に施行されたが、昭和に摘発されたケースは聞いたことがなく、違法行為が刑事事件になると認知されたのは平成になってからだろう。前述のような法に抵触する不正がないか、目を光らせているのが92年に当時の大蔵省に設置された「証券取引等監視委員会」だ。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
マーケットの番人
証券取引等監視委員会は米国の証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、通称SEC)を参考にして組織され、日本版SEC(以下、SEC)とも呼ばれる。
市場分析審査や証券検査、取引調査、開示検査を実施し、不正が疑われる場合は金融庁に行政処分の勧告を行う。犯則調査では強制調査権も持ち、裁判所の令状によって捜索なども行い、悪質な犯則事件と判断すれば検察庁に刑事告発する。文字通り、市場(マーケット)の番人だ。
SECで犯則事件を担当するのは「特別調査課」で、別名「トクチョウ」と呼ばれる。一般の方にはあまりなじみがないと思うが、強制調査権を持ち検察庁に刑事告発する役割は、国税局査察部(マルサ)とほぼ同じだ。
SEC発足直後はプロパーがいないため、採用・育成するまでのつなぎとして本体である大蔵省のほか、国税局のマルサ経験者、検察庁の検事、日本公認会計士協会などから職員が派遣された。
現在は金融庁に属するので、新聞やテレビなどのメディアは経済部の持ち場になるが、トクチョウだけは社会部の事件担当が受け持つ。以前は検察担当や国税担当が兼務していたが、注目される事件が増え、専従の記者を配置する社も増えた。