原油なら、ニューヨーク市場のウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油と欧州の北海ブレント原油が長年、世界の「価格指標」の座を競ってきた。価格指標がどの国のものにせよ、本来的に「価格は市場が決める」のが原則論だが、国際情勢に詳しい専門家は「将来的に中国が価格決定権を握ってしまえば何が起きるか分からない」と警告する。

未だ描かれぬグランドデザイン
今回の合意は始まりに過ぎない

 日本としてはこうした観点を含め、自国の商品先物市場の姿をどう描くか、というビジョンが重要になってくるはずだが、一連の議論では、そのような市場のグランドデザインをどう描くかは打ち出されていない。

 今後、JPXは6月末めどに東商取へTOB(株式公開買い付け)を始め、10月に買収を完了する予定。実現後は証券や商品を一つの取引所で売買できる世界標準の形態となり、投資家の利便性改善への一里塚を築いたのは事実だ。東商取は貴金属や農産物などの商品先物をJPX傘下の大阪取引所に移管。ぎりぎりまで議論が続いた原油などエネルギー関係の商品は当面残すことになったが、将来の移管について継続協議し、東商取は電力やLNG(液化天然ガス)の上場を見据えたエネルギー市場との位置付けで再始動することになった。

 低迷甚だしいニッポンの商品市場の活性化に向けては、グローバルな投資マネーを呼び込むため、国内外の投資家や当業者にとって魅力ある市場や商品を設計できるかがカギとなる。結婚が人生の「ゴール」でなく夫婦生活の「スタート」であるように、今回の基本合意はほんの始まりに過ぎない。

 28日の記者会見で両トップが「実務的な詰めや商品デリバティブ(金融派生商品)市場の発展に向けた作業は多く残っており、気を引き締めて参りたい」(清田氏)、「詳細な協議はこれから」(濵田氏)とそれぞれ語った言葉に希望を見出したいところではある。総合取引所というハコの準備が整った今、「商品市場の活性化」という結果を少しでも早く実現しなければ、海外取引所との差は開くばかりだ。