売買禁止の上場インフラファンドを取引し、内規に違反したという前代未聞の不祥事を起こした日本取引所グループ(JPX)の清田瞭CEO(最高経営責任者)。実は問題発覚のタイミングが偶然にしてはあまりにも不自然なため、関係者の間では東京商品取引所との間で進める「総合取引所」を巡って「清田氏が“刺されたに違いない”」との思惑が渦巻いている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)
「“刺された”としか思えないタイミングですよ」。日本取引所グループ(JPX)の清田瞭CEO(最高経営責任者)が売買を禁じられた上場インフラファンドを取引し、内規に違反したという前代未聞の不祥事が発覚した11月27日。JPXと10月に秘密保持契約を結び、「総合取引所(以下、総合取)」の協議入りに合意したばかりの東京商品取引所(東商取)の社員らには、思わず冒頭のような考えが頭をよぎった。一見、清田氏の不祥事と総合取の話は無関係に映るが、当事者の目からは両者に密接な因果関係があると邪推するのに十分な“状況証拠”がそろっているからだ――。
株式と債券、商品先物を一元的に扱う「総合取引所」構想は、第一次安倍政権時の2007年に初めて打ち出された。JPXは東京証券取引所と旧大阪証券取引所(現大阪取引所)が統合して2013年に発足以来、商品デリバティブ(金融派生商品)への進出を重要戦略に掲げ、総合取には以前から賛成の立場だ。またCEO就任から4年半たった今なお目立ったレガシー(遺産)のない清田氏にとって、総合取引所はぜひとも実現させたい宿願の一つとも目されている。
もっとも総合取の実現方針は14年以降、政府の成長戦略の一策として毎年閣議決定されてきたにもかかわらず、東商取の所管官庁である経産省とJPXの所管官庁である金融庁の天下り先を巡る“縄張り争い”などを背景に総合取設立に向けた動きは鈍かった。ここにきてようやく実現へ向けて動き出した段階に過ぎない。そんな一筋縄でいくはずもないJPXと東商取の交渉が本格化しようというセンシティブな時期に、総合取の最大の推進派である清田氏の不祥事が“都合よく”噴き出したことで、関係者から様々な憶測を呼んでいるのだ。