会計を歴史から学ぶ異例の本がヒットしている。昨年9月に上梓された『会計の世界史』(日本経済新聞出版社)は、会計分野では異例の5万部を突破し、現在も版を重ねている。著者の田中靖浩氏に、「なぜ会計を理解するために歴史を学ぶべきなのか」を伺った。(清談社 村田孔明)
歴史は会計ジャングルで
迷わないための羅針盤
会計は世界共通のビジネススキル。英語と同様に重要性は年々高まっているが、数字が苦手なビジネスパーソンにとって、会計の知識を身に付けるのは、なかなかにハードルが高いイメージがある。
「会計を勉強しようと書店に足を運べば、棚にはカラフルな簿記検定対策本、その横には財務会計、管理会計、後ろの棚は法人税。何から勉強すればいいのか迷っていると、ファイナンスの棚まで発見してしまう…これはもうジャングルですよ」
そう話すのは、『会計の世界史』(日本経済新聞出版社)の著者で、公認会計士の田中靖浩氏だ。
「そもそも日本人は誰もが暗算が得意で、おつりの計算もすぐにできる。これは世界的にも珍しい。それなのにビジネスになった途端、数字に苦手意識を持ってしまう。決算書が読めないのは、数字に弱いからではなく、ただ“会計ジャングル”の中を迷っているだけです」
田中氏は「会計を理解するためには、まずは簿記の勉強からという日本の風潮にも一因がある」と指摘する。
「公認会計士、税理士という会計のプロになるには、資格試験の必修科目である簿記の勉強は欠かせません。そういうプロに会計の勉強法を聞けば、自らの成功体験から、まずは簿記の勉強を勧められます」
「簿記は役に立つが、面白くない」と田中氏。簿記の勉強が退屈で会計を諦めた人も多いのではないか。
会計を学ぼうとする多くのビジネスパーソンは、経理のプロを目指しているわけではない。営業には交渉のための会計が必要であり、経営者には会社のかじ取りのための会計が必要となる。
「簿記から学ぶ必要はない。じゃあ、何から学ぶべきか?長年悩み続け、私は歴史だと確信しました。簿記、会計、ファイナンスは成り立ちが違うので横に並べても本質は理解できない。そこで縦に並べてみようと考えたんです。会計を理解するために歴史から勉強するのは、遠回りに見えて絶対近道になります」