「駐車場が道路になった」「自宅がいつの間にか美容院になっていた」「バス停が消えた」――。3月末に起こった“グーグルマップ”ショック。騒動の裏にはデジタル事業の覇権争いを左右する位置情報データをめぐる各陣営のつばぜり合いが垣間見える。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

グーグルマップ生活に欠かせない存在となったグーグルマップが満を持して自社データのみの地図の提供を開始した。だがそれに対抗する勢力も勃興しつつある Photo by Yoko Suzuki

 グーグルマップの下から「ZENRIN」の文字が消えた3月25日。グーグルへのデータ提供契約が終了し、同時にグーグルマップのさまざまな不具合が騒ぎとなる中、ゼンリンの株価は一時、前日比で500円も下落しストップ安となった。

 マップといえば、2012年のアップルマップ騒動が記憶に新しい。同社が地図をグーグルマップから独自開発のものに切り替えた途端、実在しない地名が表示されるなどの不具合が相次ぎ、世界的な騒ぎとなったのだ。

 そもそも、デジタル地図とはどのように作られるのだろうか。

 自治体や国などの公的機関が測量したデータを基に、人手を使ってより細部の情報を調べるのが地図調製企業だ。日本でデジタル地図データを扱うのは、最大手のゼンリン、パイオニア子会社のインクリメントP、昭文社、トヨタグループのトヨタマップマスターの4社がメイン。世界でも大手はオランダのテレアトラス、米国のナブテック(現ヒアー)しかない業界だ。グーグルなどのプラットフォーマーは、これまでこうした地図調製企業から地図データを買って使用してきた。