各国の紙幣
主要中銀の金融緩和解除と政治リスク拡大を受け、金融市場は昨年急落 Photo:Reuters

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 世界がリセッション(景気後退)に突入する危険があれば、政策担当者はこれを阻止しようと、迅速に対応する構えであったようだ。

 米国では、景気減速はまだ始まってもいなかった。1-3月期(第1四半期)の雇用は、昨年10-12月期(第4四半期)と同じペースで拡大した。企業の労働需要を測る上でより正確な指標である、民間部門の労働時間は現に加速した。

 世界に目を向けると、3月の中国購買担当者指数(PMI)は景気減速が収束しつつあることを示唆。ドイツ鉱工業生産が2月にやや改善したことで、こちらも景気減速に歯止めがかかりつつあるとの期待が高まった。要するに、景気後退懸念が完全に消え去った訳ではないが、金融市場を昨年襲ったパニックは、的外れであったことを恐らく物語っている。

 市場がパニックに陥った背景には、世界が2つの逆風に直面していたことがある。一つは、世界の中銀などによる景気刺激策の解除だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は昨年、4度利上げするとともに、緩やかなペースでバランスシートの縮小も進めた。欧州中央銀行(ECB)もこれに続く構えだった。中国当局も、信用の伸びの抑制に動いた。

 2つめは政治リスクの広がりだ。英国の欧州連合(EU)離脱を巡る混乱は設備投資を直撃。イタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)政権による財政規律を無視した行為を金融市場が嫌気したことで、同国は景気後退に陥った。一方、トランプ政権によるとりわけ中国に対する保護主義的な動きは「国際貿易と世界の工業活動に破滅的な打撃を与えた」。独立系エコノミスト、フィリップ・サトル氏は顧客向け調査ノートでこう指摘した。