バレットジャーナルの守破離の「守」は
「原型的バレットジャーナル」の実践
バレットジャーナルの型の分類や背景を説明してきましたが、もし新たにバレットジャーナルを始めようという場合、まずは「(1)原型的バレットジャーナル」を行ってみることをおすすめします。
すでにバレットジャーナルを使用中の方でも、過去に「原型的バレットジャーナル」を行ったことがない場合や、行ったことはあるが何年も前である場合は、短期間並行運用する形でも良いから「原型的バレットジャーナル」を試してみることがおすすめです。
オリジナルのルールやフォーマットは細部に至るまで磨き抜かれており、
・なぜノンブルを書くのか
・なぜタスクバレットは一般に良く使われる「□」でなく「・」なのか
・なぜタスクだけでなく、イベント、メモも書くのか
・なぜデイリーログの内容を毎日棚卸・移動するのか
・なぜ公式ノートに「LEUCHTTURM1917」を選んだのか
といった事柄にはすべて理由が込められています。これらの内容は公式サイトの説明をよく読むとほとんど書かれていますが、英語で書かれていることもあり、細かいニュアンスを理解するには読み込みが必要でした。実際に「原型的バレットジャーナル」を運用して慣れ親しむことで、理解しやすくなると思います。
今回刊行された『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』は400ページを超す大著ですが、バレットジャーナルの基本ルール・基本モジュールのことを中心に説明するという意味では、公式サイトの内容と変わりありません。それではそのボリュームの差はなにかと言えば、説明の深さです。
公式サイトでは一言しか触れられていないような、バレットジャーナルを構成する一つ一つの事項についての理由・背景・哲学など、ライダー・キャロルさんの考えが丁寧に説明されています。
そのため、新たにバレットジャーナルを開始する場合や、以前から知っている・使用中だが「原型的バレットジャーナル」は簡単にしか理解していないという場合に、その神髄を味わうための最適な解説書になっています。
バレットジャーナルはライダー・キャロルさんが自分のために最適化したノート術であるため、当然、一部または全部が自分には合わないという方もいらっしゃるでしょう。その場合は、バレットジャーナルの考え方を部分的に取り入れて自分なりに改良するか、別のノート術を採用すれば良いと思います。
ただその場合でも、「原型的バレットジャーナル」を理解することが、より自分に合った方法を考えたり見つけ出したりするための参考になります。
「原型的バレットジャーナル」を行うことは、武道・芸道を体得する際の基本的な考え方である守破離(*12)の「守」に相当します。
「破」に相当する「単純化バレットジャーナル」「装飾化バレットジャーナル」や、「離」に相当する独自のノート術へと進むためにも、一度はじっくり「原型的バレットジャーナル」を行い理解することが、大変有用だと考えます。
その際の手引書として、公式ガイドとなる『バレットジャーナル 人生を変えるノート術』は必携の一冊です。
*12 茶聖・千利休の歌にちなむ、武道・芸道を体得する際の極意で、以下のような3段階を表します。(1「守」)師匠の教えや基本の型を忠実に守り、体得する段階。(2「破」)師匠の教えに加え、他の指導者の教えや自分なりの工夫を取り入れ、型を破り改良を行う段階。(3「離」)師匠の教えから離れ、学んだことを応用し独自の方法を編み出す段階。