面倒くさがり屋のための
「単純化」のすすめ

 ブログやウェブメディアの記事、解説書等を見ると、「バレットジャーナルは、適当なノートとペンさえあれば簡単に始められるノート術」と説明されていることが多いですが、それではなぜ「(1)原型的バレットジャーナル」ではなく「(2)単純化バレットジャーナル」を行う人がいるのでしょうか。

 これは、「バレットジャーナルは、実は面倒」という厳然たる事実が存在しているからなのです。

 オリジナルのフォーマットを準備する場合に引かなければいけない線は2本のみです。 「全ページにページ番号(ノンブル)を書く」「マンスリーログに日付と曜日を書く」という準備作業は、それなりに面倒ですが一時的ですし、最近はその手間を軽減するノンブル入りノート(*4)、日付入りノート(*5)、日付テープ(*6)等も存在しています。よって、ここまでの手間はあまり問題なしと言えます。

 ところが、いざ運用が始まったときに、

・タスクだけでなく、イベント、メモ(アイデア、希望、気になることば等)も書く
・毎日、デイリーログを棚卸してやり残しを移動(マイグレーション)する

ということが、結構面倒だと感じる方も多いようです。タスク管理を主眼にバレットジャーナルを行いたい人にとって、イベントやメモはある意味不要な情報です。

 別のタスク管理術であるGTD(*7)では、これらの項目は、カレンダーに書き込んだり資料置き場に入れる等、早々にタスクリストからは除外します。同様に「単純化バレットジャーナル」では、初めからデイリーログに書かずに済ませます。

 棚卸と移動も、「今日発生し、今週中に行う」といったタスクは、実施日時を決めずに対応すると毎日転記し続けなければなりません。それならば、棚卸は週次のタイミングくらいにすると楽になるわけです。このような運用方法も、一法かもしれません。

「装飾化」も意外と簡単にできる

 バレットジャーナルの3つの型の内、ネット上で最も目につくのは「(3)装飾化バレットジャーナル」です。

 バレットジャーナルの誌面はプライベートな情報なので公開する意義は低いように思えますが、ネット上に構築されたオンラインコミュニティにおける「存在確認」や「交流起点」として重要な意味を持つことから、公開例が多いのだと考えています。

 装飾には、上記のような投稿コンテンツとしての価値を高めるだけでなく、バレットジャーナルの機能を強化する効果も存在します。

 たとえば簡素なビジネス文書であっても、題名の文字サイズを大きくしてフォントを変える等、情報の構造を明確にするための装飾は必ず行います。

 バレットジャーナルは「モジュールのフォーマットを手書きする」「ノート内にモジュールを随時配置する」といった特長があることから、トピックの文字や枠線等の要素に対して書体・サイズ・形状・色彩の装飾を行うことで、視認性・検索性を大幅に向上させることができます。

 とはいえ、ネット上の事例は凝ったものほど目立つため、それを見た方の「やってみたいけど技術的に難しそう」「継続するのが大変そう」という意見もよく耳にします。

 そんな方には、「バレットジャーナルは、実は簡単」という助言をお送りします。これは「適当なノートとペンさえあれば簡単に始められる」というバレットジャーナルの基本説明のことではなく、「装飾化バレットジャーナル」が「意外に簡単にできる」という意味での助言です。

 まずは「(1)原型的バレットジャーナル」を踏襲しつつ、各モジュールのトピックのみ、よそいきにしてみましょう。文字サイズを大きめにし、レタリングまでいかなくても丁寧に書くことで、ずいぶんと見栄えと視認性が高まります。もしアルファベットの筆記体(*8) を知っていれば、それを応用してみると、さらに装飾性が向上します。

 お気に入りのカラーマーカー(*9)があればトピックにアンダーラインを添えたり、情報の区切り線や囲み線を引いたりすることで、色彩を活かして誌面を華やかに彩りつつ、情報の構造を明確化する手がかりを与えることができます。

 多数の線を引いて作表する必要のある「ハビットトラッカー」や、ちょっと凝ったフォーマットにしたい読書記録・映画鑑賞記録・食事記録等は、貼るだけで使えるシール・付箋形式の部品(*10)を使ったり、ネットで配布されているフォーマットを使ったりすれば、簡単に組み込むことができます。

 さらに、バレットジャーナルでよく使われるモジュールをシールだけで一通り作れる製品(*11)等も登場しています。

 このような方法を使えば、実に簡単に「装飾化バレットジャーナル」を運用することができます。

(注)
*4 ライダー・キャロルさん愛用のロイヒトトゥルム「LEUCHTTURM1917」は、長期利用に耐えるハードカバーでノンブル入りです。バレットジャーナルの隆盛を受けて、国内外でノンブル入りノートの種類が増加しています。
*5 デザインフィル・PLOTTERシリーズの「A5サイズ ノートパッド 6mm罫線」は、31行の横罫にあらかじめ日付が印刷されています。また「LEUCHTTURM1917」横罫版は1ページに行が31行あり、日付を書いたり、後述の「貼暦」を貼るのに適しています。A5サイズ以下で、筆記に最適な6mm横罫で31行書けるノートは、以外に少数です。「LEUCHTTURM1917」の他には、icco nico「31行手帳」などがあります。
*6 icco nico「貼暦」は、日付・曜日を印刷したマスキングテープの嚆矢で、海外のバレットジャーナル利用者からも注目を集めています。
*7 Getting Things Doneの略で、コンサルタントのデビッド・アレンさんが提唱した仕事を成し遂げるための方法論です。次々に発生するタスクやそれに関連する事項を、一定の手順によって分類・優先度付けしてこなしていく手法です。なおデビッド・アレンさんは『The Bullet Journal Method』刊行にあたり推薦コメントを寄せています。
*8 アルファベットの単語を素早く筆記するために、各文字を続けて書くための書体です。日本国内では小学校のローマ字教育、中学校の英語教育に合わせて必須教育の一部で教えられていましたが、2002年度施行の学習指導要領から必須ではなくなり、知らない層も増加しています。欧米でも、タイプライターやPCの普及により、ほとんど使わない国や地域もあります。
*9 ゼブラ「マイルドライナー」は、(1)裏抜けしづらい水性マーカー、(2)蛍光色以外の、柔らかい色彩、(3)楔形ペン先の他に筆ペンタイプあり、ということで、愛用するバレットジャーナル利用者が多いカラーマーカーです。
*10 キングジム「暮らしのキロク」、マークス「ライフログ用マスキングテープ」、山櫻・プラスラボ「memoroku(メモ録)」等があります。
*11 パインブック「MY JOURNAL」等があります。