亡き少女への誓いと
多くの仲間に支えらえて

 ここに至るまで、横尾先生は常に “ドリームチーム”とも呼べる多くの仲間たちと共に歩んできた。

「僕は基本的に、『この人だ』と思ったら、会いに行き、『ぜひ力を貸してください』とお願いします。共同研究に上下関係はありません。『患者さんのために』という目的に共感していただき、農学部、工学部、獣医学部から企業まで、素晴らしい人たちと仲間になることができました。

 例えば長嶋比呂志教授(明治大学)は、世界でも最も遺伝子改変ブタの作製に長けている研究者です。腎臓を、ヒトに使えるように大型化するためにはブタでの研究が不可欠でしたが、長嶋先生のお陰でできました。

 小林英司教授(慶應義塾大学)は、マイクロサージャリーの天才です。超絶テクニックが必要な、ラットやマウスのような小動物で人間を想定した手術ができたのは、小林先生がいたからです」

 研究をやり切った先には、産業化へ向かう険しい道が続く。ゴールは再生腎臓を一刻も早く実用化し、世界中の患者に届けることだ。産官との連携はもとより、特許の取得など、医師・研究者としての力量だけではどうしようもない壁が、何重にも立ちはだかっているのだ。

 実際近年、多くの大学の医療者や研究者がベンチャーを立ち上げ、産業化に挑んでいるが、成功している事例はあまりない。そこで横尾先生のチームには、腎臓の構造のように複雑なプラットフォーム作りを担う企業も参画している。

 協力者の1人、バイオス株式会社(東京都)の林明男社長は語る。

「私が初めて出会った頃、先生はまだ講師にもなっていなかったと思います。とにかく朝から晩まで、病院で患者さんを診て、終わったら夜遅くまで大学で研究をする。休みは青森県にある北里大学の獣医学部か、ブタを使った研究のために川崎市の生田にある明治大学の農場に飛んで行く。さもなければ、大学の実験室にこもっている。

 とにかく休みなく、研究に打ち込んでいる姿を目の当たりにするうちに、(ああ俺はこの人の手助けがしたい)と心底思うようになり、コアの仕事で得た利益を、投資の形で出資し、共同研究という形で、支援させていただくことにしました。

 これは僕だけでなく、ほかの皆さんも言います。『なんか不思議なんですけど、好きになっちゃうんですね。協力せずにはいられない』と(笑)」