この時期、平成21年度(2009年度)開設予定の大学院が文科省から発表されている。新しく誕生する大学院は多くの場合カリキュラムとシステムの両面で社会的ニーズに応えているもので、これから大学院進学を目指す社会人にとって好ましいシステムがとられていることが珍しくない。
今回そうした、まっさらな大学院から取り上げるのは『武蔵野大学大学院通信教育部 人間学研究科人間学専攻』。仕事を辞める必要がない、通信制の大学院である。
武蔵野大学はもともと築地本願寺の敷地内に設立された、浄土真宗本願寺派を母体とする大学である。現在ある都下のキャンパスに移転し、総合大学の体裁を整えていった。東京のビジネスマンになじみが薄いとすれば、仕事と両立しては通学しにくい立地の面だろう。
ただし今回、武蔵野大学が設置するこの通信制大学院には、立地の問題をクリアするシステムの優秀性を持っている。
海外からの入学も可
ウェブを活用した履修システム
通信制大学院といったが、インターネットを多用する大学院である。履修の中心となるスタイルはウェブベースでの学修が中心になる。スクーリングも組み込まれて入るが、学習者が物理的に移動する必要の負担は極小化されている。ウェブ上で試験を行なうシステムも導入済みだ。
注目すべきは、海外からの入学者に門戸を開いていることだ。国内で教材等を受け取れる住所と、学位費引き落とし用の国内銀行口座などが必要となるが、ウェブベースの学修は海外でも続けられる。すなわち海外赴任の可能性がある社会人であっても、中断することなく在学し、履修を継続できるのである。
人間学というカリキュラムは目を引く。必修となっているのは『人間学特講』『死生学特講』『老年学特講』『グリーフケア特講』『ターミナルケア特講』などからなる人間学系の科目。設立母体から来る仏教・思想系の科目は、心理系、保健・福祉系科目と同様に選択科目として配置された。最終的には『特定課題研究』で、修士課程を修了することになる。
『生老病死』の問題に取り組む宗教系の大学院として捉えることも出来るが、むしろ医療や福祉で解決しきれない問題を宗教・思想・心理学を駆使したアカデミックレベルで考える大学院といった意味合いで理解するほうが、一般的な社会人の認識としてはしっくり来る。
最近、東京大学が中心となって提唱している「死生学」へのアプローチに、宗教的な立ち位置から切り込める大学院としても、注目できる存在である。オンビジネスの大学院には見えないだろうが、教養として大学院を修める必要を理解している人なら、この大学院の設立の意味は深い。
出願方式にも
インターネットを導入
出願方式にもインターネットを採用した。平成20年11月11日(火)からはじまった第1回出願期間は11月26日(水)17時まで。大学院のホームページから出願できる。
入学定員は40人。修業年限は2年だが、最長6年まで在学できる。初年度の納入金は34万円プラス、スクーリングの受講料。修士課程の学費としては非常に抑えられている。またスクーリング受講者の学資補助として、選考のうえ2年間で最大10万円の奨学金を受けられるシステムも整備されている。